5年ぶりの登場、ジョン・ピザレリにインタビュー | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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5年ぶりの登場、ジョン・ピザレリにインタビュー

5年ぶりの登場、ジョン・ピザレリにインタビュー

[ 2018ニューイヤー・スペシャルインタビュー ]
シナトラとジョビンに捧ぐ
話題の新作を携えて
ギター弾き語りの名手が5年ぶりに登場

40年近いキャリアを誇るギタリストでシンガーのジョン・ピザレリが新作『シナトラ・アンド・ジョビン・アット・フィフティ』を発表した。敬愛するフランク・シナトラとアントニオ・カルロス・ジョビンの共演盤にインスパイアされたこのアルバムを携えての今回の来日公演。果たしてどのようなステージになるのだろうか?

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interview & text = Takao Ogawa translation = Kazumi Someya



 フランク・シナトラとアントニオ・カルロス・ジョビンが組んで歴史的なアルバム『シナトラ&ジョビン』(リプリーズ)が吹き込まれたのは1967年のこと。それから数えて2017年は半世紀の節目を迎えた。ふたりに強い影響を受けてきたジョン・ピザレリがそのアルバムにインスパイアされて吹き込んだのが『シナトラ・アンド・ジョビン・アット・フィフティ』だ。

 シナトラといえば、ジャズの世界にとどまらず、ポピュラーな世界で長いこと絶大な人気を誇ってきた偉大なシンガーである。一方のジョビンも、ブラジル音楽を代表するボサノヴァ生みの親のひとりとして幾多の名曲を残してきた。こちらもブラジルのポピュラー音楽を一躍世界的なものへと広めた功労者だ。それから50年。シンガーとして、あるいはギタリストとして目下絶好調のピザレリが、私淑するふたりに捧げて吹き込んだのがこのアルバムだ。

「ジョビンの音楽は1980年代に聴いて大きな影響を受けた。以来、自分なら彼の曲をどう料理するか、そのことをよく考えていた。今回のアルバムで取り上げたメドレーや新曲のアレンジは、シナトラとジョビンが作ったアルバムからヒントを得ている」

 この作品で大きな話題を呼びそうなのが、ジョビンの孫であるダニエル・ジョビンが多くの曲でピザレリとデュエットを聴かせていることだ。これも『シナトラ&ジョビン』を連想させるものとなった。

「ダニエルに参加してもらうことは、この作品を作る際に真っ先に浮かんだアイディアだ。ジョビンの音楽を完全に継承しているだけでなく、その音楽が持つヴァイブレーションをプロジェクトに持ち込んでくれた」

 ダニエルの祖父、ジョビンについてはどう思っているのだろうか?

「天才以外の何者でもない。ブラジルのガーシュインだよ」

 ピザレリはシナトラをトリビュートした『ディア・ミスター・シナトラ』(テラーク)を2006年にリリースしているし、ジョアン・ジルベルトにトリビュートした2004年の『ボサ・ノヴァ』(同)でもジョビンの代表的な曲をいくつも取り上げていた。ピザレリにとっては、それらの集大成的なアルバムが今回の作品なのだろう。

 ボサノヴァについてはこんなコメントを寄せてくれた。

「自分の身に沁みついたもので、言い換えるなら活気を感じさせる音楽かな?」

 シナトラから学んだことについては? の問いにはたったひとこと「歌の解釈」。

 ピザレリは優れたギタリストでもある。そして、ボサノヴァとギターは切ってもきれない関係だ。

「わたしは長いことかけて自分なりのスタイルを築いてきた。それが反映できているといいけれどね」

 いまのキャリアだからこそできる音楽があったら教えてほしいとの質問には、「常に最高のジャズマンになることを目指しているし、これからも可能な限りさまざまなミュージシャンと共演していきたい」と答える。

 ところで、「ブルーノート東京」は2018年に30周年を迎える。長いキャリを誇るピザレリにとって"長く続けること"で得たものはなんだったのか?

「世界のあちこちで演奏するたび、その前よりも楽しくなっていることが実感できる。もうひとつ、お世辞じゃないけど、ブルーノート東京は最高の場所だ」

 こんなことを語るピザレリだが、今回の公演ではどんなレパートリーが聴けるのだろう?

「新作以外に、これまで発表してきたアルバムからもいろいろ選びたい」

 ピザレリの独特なヴォーカルでジャズとボサノヴァの名曲を聴く─今回の「ブルーノート東京」公演ではそんな贅沢で楽しいステージが堪能できそうだ。

音楽史上最高のコラボ名盤
『シナトラ&ジョビン』

1960年代、ボサノヴァはブラジルの新しい音楽として世界中で流行していた。生粋のジャズ・シンガーからポピュラー寄りのシンガーに変身しつつあったシナトラにとってもこの音楽は格好のレパートリーだった。そして実現したのが、ボサノヴァの創始者として知られるジョビンとの共演である。ふたりが個性をぶつけ合うことで、数多いボサノヴァ作品の中でもこのアルバムは永遠の輝きを獲得した。

スタジオでのフランク・シナトラ(左)とアントニオ・カルロス・ジョビン(右)
Courtesy of Frank Sinatra Enterprises

 

フランク・シナトラ&アントニオ・カルロス・ジョビン
『シナトラ&ジョビン(50 周年記念エディション)』
(ユニバーサル ミュージック)

ジョン・ピザレリ
1960年、ニュージャージー生まれ。名手バッキー・ピザレリの息子で父親譲りの7弦ギターを操り歌手としても人気が高い。初アルバムは80年に録音した父親とのギター・デュオ作品『2 X 7 = Pizzarelli』。
 

『シナトラ・アンド・ジョビン・アット・フィフティ』
(ユニバーサル ミュージック)

Tour Information

丸の内・コットンクラブにも登場
1.29 mon. - 1.30 tue.
公演詳細ページ>>

小川 隆夫(おがわ・たかお)
小川 隆夫(おがわ・たかお) 音楽ジャーナリスト。近著に『証言で綴る日本のジャズ 2』『マイルス・デイヴィスが語ったすべてのこと』がある。2016年からは精鋭を結集し、マイルスのスピリットを継承したジャム・バンドSelim Slive Elementsを率いて活躍。デビュー作『Resurrection(復活)』も好評発売中。

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