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現代ジャズ界を牽引するジェイソン・モランにインタビュー

現代ジャズ界を牽引するジェイソン・モランにインタビュー

現代ジャズ界を牽引するピアニスト
トリオで3年ぶりの登場

現代のジャズシーンで最もクリエイティブなピアニスト、ジェイソン・モランが 活動の中心にしているトリオ「バンドワゴン」としてブルーノート東京のステージに立つ。バンドワゴンとはどんなバンドなのかから始まり、最近の活動についてもジェイソンに語ってもらった。

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text = Mitsutaka Nagira translation = Kazumi Someya



「バンドワゴンはタラス・マティーン、ナシート・ウェイツと僕で1999年から共演を続けてきた。僕らは流れのある音楽が好きなんだ。物語性がある音楽、先生たちから教わったことを思い出させてくれる音楽、自分たちの若さも成熟も映し出す音楽。人生の複雑さにも似た響きの音楽。オーディエンスに感じ取ってもらえる体験を編み出すためのレパートリーを用意している」

 そんなバンドワゴンは過去の偉大なジャズの歴史を大事にするジェイソンらしく参照先がある。それらはとても興味深いラインナップだ。

「ハービー・ニコルス・トリオ、アンドリュー・ヒル・トリオ、マックス・ローチ・トリオ・フィーチャリング・ハサーン、ジェリ・アレン・トリオ。いずれも僕にとって意味深いグループだ。タイショーン・ソーリーのトリオの大ファンでもあるね」

 近年のジェイソンはその創造性を更に高めている。2017年に発表した『MASS {Howl, eon}』はエレクトロニクスと即興が入り混じる快作だ。

「ジュリー・メーレトゥって画家がいて、彼女がSFMOMAからの委託で2枚の大作を描くためにハーレムの教会を1年間借りていたんだけど、ちょうど僕は自分のスタジオ兼作業場を閉めるところだったので、楽器をその教会に置かせてもらえないかと頼んだ。そしてジュリーが絵を描く傍らで僕は音楽を書こう、と。その過程で、この音楽はグラハム・ヘインズとジャマイア・ウィリアムスと一緒にレコーディングしたら最高だろうと考えた。あの音楽で用いた反復の抽象性は、アメリカが立ち直ろうとしている植民地主義の暴力を表すメタファーだよ」

 エレクトロニクスを用いた先鋭さと先人から継承したものを同時に鳴らそうとするのがジェイソンらしさだ。

「エレクトロニクスは常に先をいき、グラハムはサウンドプロセッサーの扱いに実に長けている。だから彼に先導してもらって、僕はピアノとローズを弾きながら、ノイズの伴奏をする術を探る。これはセシル・テイラーはじめ、数多くのピアニストが教えてくれたことだ」

 そんな彼が最も敬愛する音楽家の一人がセロニアス・モンク。2017年はモンクの生誕100年のメモリアルイヤー。ジェイソンは度々モンクをカヴァーするモンクフリークだ。

「僕らはモンクを祝福中なんだ ! 彼は僕の人生で最も重要なミュージシャン。ブルーノートではモンクもだけど、〈セロニアス〉という曲を収録した僕らの新作『THANKSGIVING AT THE VANGUARD 』のリリースも祝うことになるだろうね ! 」

 多く先人たちが紡いできたジャズの歴史が、ブルーノート東京のステージでジェイソンの手によって、新たなジャズとして解釈されるはずだ。

 

(上)
『MASS {Howl, eon}』
(Yes Records)

 

(下)
『Thanksgiving at The Vanguard』
(Yes Records)

柳樂光隆(なぎら・みつたか)
音楽評論家。現在進行形のジャズを紹介したガイド・ブック「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者。後藤雅洋、村井康司とともに初録音から100年が経ったジャズの歴史を再検証した鼎談集『100年のジャズを聴く』を発売した。

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