6年ぶりの出演! オマーラ・ポルトゥオンドに再会できる奇跡 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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6年ぶりの出演! オマーラ・ポルトゥオンドに再会できる奇跡

6年ぶりの出演! オマーラ・ポルトゥオンドに再会できる奇跡

伝説のヴォーカリストが6年ぶりの登場

現在87歳、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブでの活動で知られる伝説的ヴォーカリスト、オマーラ・ポルトゥオンドがキューバのトップミュージシャンと共に来日。彼女のキャリア集大成となるステージであり、音楽史に残る歴史的一夜になることは間違いない。

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text = Shinichi Takahashi

 この3月、オマーラ・ポルトゥオンドがブルーノート東京のステージに立つ。大げさでなく、これは奇跡と言っていいだろう。

 2016年、"アディオス(さよなら)ツアー"と銘打たれたブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの来日公演で、圧巻の歌声を披露したオマーラ。その姿を観て、観客のだれもが彼女の日本公演に立ち会えた喜びに打ち震えたはずだ。あれから2年、87歳となったオマーラが再び日本へとやってくる。よくぞこの来日公演が実現したものだ。公演日程はブルーノート東京が3月18日と、3月20日の六本木EXシアターの2回のみ。しかもブルーノートはオマーラの体力面を考慮しての1日1回公演となっている。このプレミアムなコンサートを存分に楽しむために、まずは彼女の活動歴をザックリと振り返ってみたい。

 1930年に生まれたオマーラがプロ歌手としての活動を開始したのは彼女が17歳の時だ。当初はキューバ歌謡にジャズのエッセンスが加わったフィーリンと呼ばれる音楽ムーブメントの中心にいたオマーラだが、その後は多様な音楽ジャンルでその才能を発揮することとなる。キューバ伝統音楽の改革者、アダルベルト・アルバレスと組んだアルバム『熱きソンの出会い』で評価を不動のものとしたとき彼女は53歳、その後は巨匠ピアニストのチューチョ・バルデスとのデュオ作やハービー・ハンコックら米国ジャズ界の巨人との共演まで、30年以上に渡り世界の第一線での活動を続けている。

 そんな彼女が一際大きな国際的知名度を獲得したのが、ご存知ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブへの参加によってだ。米国人ギタリストのライ・クーダーによって"再発見"された古老ミュージシャンたちに混じってなお、オマーラは一段と強い存在感を発揮した。よく勘違いされるのだが、オマーラはブエナ・ビスタによって再発見されたミュージシャンではない。むしろ、オマーラが参加したことでブエナ・ビスタは世界的音楽プロジェクトとして恥ずかしくない歌声を確保できたと考えるのが妥当だろう。

 今回の来日メンバーはオマーラの数多い日本公演の中でも、過去最高と言っていい充実ぶりだ。ピアニストのロランド・ルナは僕が監督したキューバ音楽のドキュメンタリー映画『Cu-Bop(キューバップ)』に、主要ミュージシャンとして登場する若手ナンバーワンのピアニストだ(※1)。映画内の、彼が自室のピアノで『ムーンリバー』を演奏する場面を観たミュージシャンの菊地成孔氏は「過去に見た2000本以上のジャズ映画のなかで、最も素晴らしいピアノ演奏シーン」と絶賛した。ドラムのロドニー・バレットもキューバで一番の実力者、ベースのガストン・ホヤと共に作り出すリズムは、音楽大国キューバの中でも桁違いのパワーとエネルギーで聴く者を圧倒するだろう。

 オマーラの年齢から考えて、恐らく今回が最後の来日となる。皆さん、どんな手段を講じてでもこの歴史的コンサートに立ち会ってください。

※1 アーティスト都合により、ブルーノート東京公演のみ、ピアニストがロランド・ルナから奥山勝へ変更となります。

『Cu-Bop across the border』 3月、東京から順次全国上映スタート

高橋慎一(たかはし・しんいち)
映画作家、写真家。東京工芸大学卒。写真家として多くのアーティストの撮影を手がける。キューバのミュージシャンたちを追ったドキュメンタリー映画『Cu-Bop across the border』を監督、3月10日よりシネマート新宿で公開。

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