BJ・ザ・シカゴ・キッドがいよいよ来日! | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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BJ・ザ・シカゴ・キッドがいよいよ来日!

BJ・ザ・シカゴ・キッドがいよいよ来日!

来日直前
BJ・ザ・シカゴ・キッドの魅力を
音楽ジャーナリスト、林剛が解説!

現代ブラック・ミュージック・シーンを席巻するソウル・シンガー、BJ・ザ・シカゴ・キッドがいよいよ来日する。スティーヴィー・ワンダー、カニエ・ウェスト、ケンドリック・ラマー、ドクター・ドレー、そしてチャンス・ザ・ラッパーと、共演アーティストの錚々たる顔ぶれが物語るように、今、シーンにおいて最重要人物だ。今回はその魅力を音楽ジャーナリストの林剛さんが解説します。

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 今回、ブルーノート東京で初公演を行うBJ・ザ・シカゴ・キッドは、正統派R&Bシンガーとしての側面を持ちながらR&Bやヒップホップを中心に様々なアーティストとコラボレーションを行い、今や"客演王"と呼べるほどの存在になっている。とりわけケンドリック・ラマーやチャンス・ザ・ラッパーといった当代の人気ラッパーとの共演はBJの名を日本でも一気に高めることになったし、ここ1~2年のR&Bに限定しても、アンダーソン・パーク、ソランジュ、PJ・モートン、レディシ、ケヴィン・ロスなどの近作に参加。10代から音楽活動をしていたBJのシンガー/ソングライターとしてのキャリアは15年以上に及ぶが、特にドクター・ドレーやケラーニ、ジル・スコットなどとコラボした2015年以降の活躍ぶりは目覚ましいものがある。

BJ the Chicago Kid - Church ft. Chance The Rapper, Buddy

 現在の活動拠点はLAだが、その名に"シカゴ"とあるように、BJ・ザ・シカゴ・キッドはイリノイ州シカゴ出身。2009年に出した最初のミックステープが『A Taste Of Chicago』というタイトルだったように地元意識は強い。最初期に本名のブライアン(・ジェイムス)・スレッジ名義で関わったデイヴ・ホリスターをはじめ、カニエ・ウェスト、コモン、チャンス・ザ・ラッパー、ヴィック・メンサ、ジェレマイなど、シカゴ出身のアーティストとも絡んできた。また、同じくシカゴを代表するシンガー/ソングライターのR.ケリーに憧れていることはケリーの""When A Woman's Fed Up"のカヴァーを披露していたことからも明らかだが、ケリーやデイヴ、チャンスやカニエがゴスペルへの愛、信仰心を作品に反映させてきたように、聖歌隊出身であるBJにおいてもゴスペルとの繋がりは(あえて強調するまでもなく)切り離せないトピックだ。デイヴ・ホリスターの曲からしてジェラルド・ハドン(アーバン・ゴスペルの奇才デイトリック・ハドンの兄弟)との共作だったし、活動初期にはメアリー・メアリーのバック・ヴォーカリストを務め、クリスタル・エイキンなどの曲でペンを交えてもいた。配信リリースのアルバム『Pineapple Now-Laters』(2012年)に続くフル・アルバムとなったメジャー第一弾作『In My Mind』(2016年)でチャンス・ザ・ラッパーと共演した"Church"では俗世にまみれつつも信仰心を失わない彼(ら)の心情が描かれていたが、聖と俗を彷徨うような姿はR.ケリーのようであり、ケリーが憧れるマーヴィン・ゲイにも通じている。

BJ the Chicago Kid - Turnin Me Up

 思えばBJは、第59回グラミー賞「ベストR&Bアルバム」部門にノミネートされた『In My Mind』にて、"Turnin' Me Up"という、憧れのディアンジェロ(BJはディアンジェロに捧げるカヴァーも発表している)を経由してマーヴィン・ゲイに辿り着いたような曲を披露していた。同曲を含むアルバムのリリース元は、マーヴィンの古巣で、BJが初期に関わったスティーヴィ・ワンダーが今も在籍するモータウン。そのモータウンの2010年代における顔とも言えるBJはマーヴィン・ゲイの名曲"What's Going On"の21世紀版リミックス(10インチ・サイズのEPで発売)にてマーヴィンとの擬似デュエットにも挑戦した。似た手法でマーヴィンの"Cleo's Apartment"を引用した"Uncle Marvin"なる曲を発表していたことも記憶に新しい。BJが生まれたのはマーヴィンがこの世を去った84年のことだが、少しロマンティックな見方をするなら、BJはマーヴィンの生まれ変わりだと言えなくもない。

Marvin Gaye - What's Going On (2016 Duet Version) ft. BJ The Chicago Kid

 また『In My Mind』では"Woman's World"という、ジェイムズ・ブラウン"It's A Man's Man's Man's World"へのオマージュとも受け取れるクラシックなソウル・バラードを歌っていたが、これなどはR.ケリー"When A Woman Loves"のアプローチにも通じており、朗々と歌い上げるヴォーカル・スタイルも含めて、ここでもケリーの後継者的な一面を見せていた。さらにディアンジェロだけでなくアッシャーの曲を歌ったトリビュートEPも発表していたBJは、ファルセットを交えつつ、ネオ・ソウルに顕著な言葉を積んでいくような唱法からゴスペル・マナーのストレートな歌い込みまでを披露できる器用なシンガーであり、その全方位的なセンスやスキルは『In My Mind』の内容そのものと言っていい。

BJ The Chicago Kid - Woman's World

 日本で自身のライヴを行うのは今回で2度目。過去のステージは、ディアンジェロ"Send It On"やプリンス"Do Me Baby"などのカヴァーを挿み、BJの名をメジャー・フィールドに押し上げたスクールボーイ・Qの"Studio"も織り交ぜるなど、彼のルーツやキャリアが垣間見える仕掛けにもなっていた。パワーで押し切るような激しいバック演奏も、チャーチ上がりでドラマーとしての顔も持つBJならではといったところ。もちろんライヴはいつ観ても刺激的だろうが、各所からラヴコールが絶えない彼の勢いは、今この瞬間に間近で感じておきたいものだ。

ScHoolboy Q - Studio ft. BJ The Chicago Kid

 

(上)
『In My Mind』
(Motown)

 

(下)
『Church』
(Motown)

林 剛(はやし・つよし)
音楽ジャーナリスト。R&B/ソウルをメインに様々な媒体で執筆。近著は2010年代中盤までのシーンをまとめた『新R&B教本』(SPACE SHOWER BOOKS)。今春には共著となる音楽書を複数発表予定。

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