ブレインフィーダー発の最新作も話題沸騰!待望の才女が来日 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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ブレインフィーダー発の最新作も話題沸騰!待望の才女が来日

ブレインフィーダー発の最新作も話題沸騰!待望の才女が来日

シーンのキーパーソン、ダッドリー・パーキンスも参加
"現代のニーナ・シモン"と称される才女がステージに!

 シンガー、ラッパー、プロデューサーとして活躍する才女ジョージア・アン・マルドロウ。
ブレインフィーダーからの最新作『オーバーロード』も高い評価を受ける中、待望の来日公演を迎える彼女の魅力に迫る。

photography = Drew Gurian, Rob Seher,
text = Masaaki Hara

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 ジョージア・アン・マルドロウは、2006年にアルバム『Olesi:Fragments of an Earth』でStones Throwからデビューした。スピリチュアルなフリー・ジャズも使った型にはまらないサンプリングとビートメイキング、それにシンガーでありラッパーでもあることを証明するように伸びやかなヴォーカルを重ねた。このアルバムをほぼ一人で作り上げた当時の彼女はまだ22歳だったが、ネオソウル以降に登場したシンガーソングライターの新しいスタイルを示していた。そして、アルバムのプロデュースを担ったラッパー/プロデューサーのダッドリー・パーキンスが公私ともにパートナーとなって以後、活動を共にしていくことになる。それぞれの作品の他に、二人の頭文字を取ったG&D名義でのリリースも多い。

インスピレーションの源泉は"家族"に。
ジャズに始まり、繋がるその音楽性

 マルドロウの父ロナルド・マルドロウは、70年代初頭からジャズ・ギタリストとして活動を始め、主にサックス奏者エディ・ハリスのバンドで活躍をした。母のリッキー・バイアーズはファラオ・サンダースやローランド・ハナらと活動したシンガーで作曲家でもあった。「最初のインスピレーションは家族だった。親戚も含めて、音楽好きが集まっていたの」とマルドロウは言う。

 同時に、彼女はヒップホップの黄金期を多感な年代にリアルタイムで体験する。KRS・ワンが最初に影響を与えたラッパーだった。地元ロサンゼルスのコミュニティでアフリカの文化や世界の歴史を教えるプライヴェート・スクールに参加し、ブギ・ダウン・プロダクションズの"My Philosophy"のヴィデオを見て心を奪われたと言う。「子供ながらに納得がいかない不思議なことが、ここで暮らしていると"白"と"黒"を巡って常に起きていた。その疑問がヴィデオで紐解かれていく感覚があったわ」

 家には母のピアノがあり、楽器を演奏できる環境もあったが、彼女は17歳の時にドラムマシーンを手に入れると、それを使って制作することに夢中になった。ちょうど2000年代を迎えた頃で、ネオソウルのムーヴメントの全盛期だった。ロサンゼルスでは、のちにマルドロウをプロデュースし、以前からパーキンスとも活動してきたマッドリブがソロ・デビューして新しい流れを起こそうとしていた。ちなみに、マッドリブの父はR&Bシンガーのオーティス・ジャクソン・シニアで、叔父はジャズ・トランペッターのジョン・ファディスである。

 マルドロウが作り出す音楽は(またマッドリブが作り出す音楽も)、70年代のジャズやR&Bと無縁ではなく、親の世代から直接的に受け継いでアップデートしたものがあった。そのアップデートを可能にしたのが、ヒップホップという表現だった。「ドラムマシーンと出会っていなかったら、楽器がもっと上手くなっていたかもしれない」とマルドロウは冗談交じりに語ったが、ドラムマシーンとサンプラーから生まれたサウンド、そして彼女の歌には過去の音楽からの流れを確かに感じ取ることができる。

着実に積み上げたキャリア。
そして、ブレインフィーダーからの代表作

 マッドリブがプロデュースした『Seeda』(2012年)はソウル・シンガーとしてのマルドロウの魅力を伝えていた。別名義のジョティでリリースした『Ocotea』(2010年)や『Denderah』(2013年)はマッドリブのイエスタデイズ・ニュークインテットの如く一人で作ったインストのエレクトリック・ジャズ・アルバム。ジョティは両親の他、彼女が精神的な師と仰ぐアリス・コルトレーンにインスパイアされたプロジェクトだ。一方、『A Thoughtiverse Unmarred』( 2015 年)は純然たるラップ・アルバムで、ラッパーとしての力量を示した。また、モス・ デフやエリカ・バドゥ、ロバート・グラスパーからブラッド・オレンジまで、マルドロウはゲストとして多くのアーティストの録音にも招かれてきた。

 そして、フライング・ロータス率いるブレインフィーダーと契約して最新作『オーバーロード』(2018年)がリリースされた。これは間違いなく今後もマルドロウの代表作になるアルバムで、これまで彼女が大切にしてきたアフロ・セントリックな表現を、よりスケールアップしてみせた。ロータスとパーキンス、それにソウル・シンガーのアロー・ブラックがエグゼクティブ・プロデューサーを務め、彼女の音楽性を最大限に引き出している。

「フリー・ジャズも私に言わせれば教会音楽と繋がってる。いろんな音楽があってどれも好きだけど、元を辿ればアフリカにたどり着く。アフリカって、音楽の最初の遊び場だったんでしょうね」と言う彼女の言葉は、そのまま自身の音楽をも言い表している。ソウルフルでエモーショナルであり、フューチャリスティックでエクスペリメンタルな美しさも持つのがマルドロウの音楽だからだ。そんな音楽が、パーキンスを交えたバンドと共にどうステージで展開されるのか、実に楽しみでならない。

※ 文中の発言は筆者によるインタビューより

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『オーバーロード』
(Brainfeeder / Beat Records )

ブレインフィーダー、D・パーキンス...
取り巻くキーワードに、公演への期待が高まる!

 ジョージア・アン・マルドロウの夫ダッドリー・パー キンスは、デクレイムの名義で90年代からマッド リブのいたヒップホップ・グループ、ルートパック などと活動を共にしてきた西海岸アンダーグランド・ シーンのキーバーソン。マルドロウ共々フライング・ ロータスからの信頼も厚く、彼が切望し、ブレイン フィーダーが、ビート・ミュージック、サンダーキャッ トやカマシ・ワシントンらの新しいジャズに続いて、 マルドロウの音楽を紹介するのは当然の流れなのだ。

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公私ともにパートナーのダッドリー・パーキンスと。

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V.A.『Brainfeeder X』
(Brainfeeder / Beat Records )

ブレインフィーダー YouTube チャンネル https://www.youtube.com/user/Brainfeedermedia


原 雅明(はら・まさあき)
音楽評論家。レーベルrings のプロデューサー、LAの非営利ネットラジオの日本ブランチdublab.jpのディ レクターも務める。新著『Jazz Thing ジャズという何か』。

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