沼澤尚が見るシンディ・ブラックマン・サンタナのプレイ
「目と耳を疑う、凄まじいプレイ」
沼澤尚が語る、ライヴの見どころ
パワフルなドラミングとファンキーなルックス、実力と人気を兼ね備えたシンディ・ブラックマン・サンタナが自身のバンドで登場。 今回はジャコの息子フェリックス・パストリアスを始めとする次世代の凄腕たちも帯同する見どころ満載のライヴ!
text = Takashi Numazawa
photography = Chad Tasky
もちろん1987年リリースのデビューアルバム『ARCANE』はその頃LAにいた学校回りの仲間に知れ渡り、NYでこんな人達とバリバリにやってるバークリー出身の20代の黒人女性!と驚いたのをはっきり覚えている。歴史に基づいたアメリカでのアカデミックなドラム教育の土台にあるのは常にジャズ。タイムフィール、インディペンデンス、サイト・リーディング等々、どんな科目でもまずジャズのスタイルとして学び、ひたすらジャズのスタンダード曲を覚え、繰り返し演奏し、そして歴史を築いてきたジャズの名作&名演を可能な限り聴き続けることが教育の基本になっている。彼女の演奏を30年前に初めて耳にした時に皆が感じたのが、この女性ドラマーがどれだけアート・ブレイキー、エルヴィン・ジョーンズ、トニー・ウィリアムスをはじめとしたJAZZ GREATS達からオーセンティックな影響を受け、それを見事に自分の物にしてきたのかという事。しかも最も耳に残ったのが常にアグレッシヴでありながら、心地よいタイムをキープ&ドライヴしまくるライド・プレイ。男性的な楽器を演奏する女性ミュージシャンにありがちな、男勝りのとか、という感じではなく逆に男性には無いお洒落感を感じたのも特に印象的だった。
ほとんどジャズシーンのみでだったその彼女のお洒落感が、ジャンルレスに、それも一気に世界レベルで注目されることになったのがレニー・クラヴィッツ1993年の傑作ミュージックビデオ「Are You Gonna Go My Way(邦題「自由への疾走」)」。前作「Mama Said」の世界的大ヒットからサウンドはもちろんヴィジュアルとファッションでも当時の最先端トレンドとして世の中をリードする存在になっていたレニー・クラヴィッツのこの最新作での秀逸すぎる映像とサウンドが、さらに彼をビッグなスーパースターにしたのはもちろん、ここでスーパーかっこいいアフロとサングラスと衣装でスーパーかっこいいこのビートをぶっ叩いていたのがシンディ・ブラックマン。オリジナルレコーディングはレニー・クラヴィッツ本人なのだが、当たり前のように自分も観に行ったこの当時の世界ツアーでの目と耳を疑うような彼女の凄まじいプレイは忘れられない。ここからの彼女の快進撃は自身本来のジャズシーンでの活動に拍車をかけながら、現在進行形で続いているレニー・クラヴィッツ、さらにカルロス・サンタナとの活動と共にとにかくその"virtuosity度=融通性"が際立っている。
その彼女がジャコ・パストリアスの息子でイエロージャケッツにも在籍した(2012~2015)ベーシストのフェリックス・パストリアス、NYシーンで活躍中のプエルトリコ・アメリカンのキーボード奏者ザッカイ・カーティスとフランス人ギタリスト、オーレリアン・バディネックを引き連れて自身のグループとしての初来日。それも世界最高峰のクラブ=ブルーノート東京でのステージで。目の前で繰り広げられる彼女のvirtuosityぶりが堪能できるのは間違いない。
沼澤 尚(ぬまざわ・たかし)- 1960年、東京都出身。83年にL.A.に渡りチャカ・カーンやボビー・ウーマック等との共演を重ねる。現在はシアターブルックでの活動の他、国内外を問わず高い評価を得る日本で最も多忙なセッションドラマーでもある。
CINDY BLACKMAN SANTANA GROUP
featuring ZACCAI CURTIS, AURÉLIEN BUDYNEK & FELIX PASTORIUS
2019 5.8 wed., 5.9 thu., 5.10 fri.
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:20pm Start9:00pm
公演詳細はこちら → https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/cindy-blackman-santana/