女性のプロデューサーが少ない頃から活躍していたミッシー・エリオットに、ソング・ライティングとサウンド・プロダクションの両方で最も影響を受けたというニアは、次第に自分で制作も始めていった。2013年には初めてのEP『Colours』をリリースした。そして、ロサンゼルスのシーンの中で、彼女の声と歌は際立った個性を確立するようになった。ベルリンからロサンゼルスに移ってきたモッキーはいち早くニアの才能を見出し一緒に曲作りを始め(アルバム『No Place Is Safe』収録の"Seem So"はその最初の共作)、カマシやライアン・ポーターも彼女を録音に誘った。
『No Place Is Safe』は満を持してリリースされたデビュー・アルバムだ。数ヶ月間、毎日1曲書くという試みを一人で続けた。「今日は何について曲を書こう」と考えるところからスタートし、フリースタイルで曲を作っていった。タイトルが示すように、安全でいられる場所が見つけられない外の世界と、自分の内面との対比を見つめている。ニアはその曲作りのプロセスをこう説明する。
今回、ニアと一緒に来日するベースとギターのブランドン・ユージン・オーウェンズは、ケンドリック・ラマー『To Pimp a Butterfly』を始め、テラス・マーティンやマーク・ド・クライヴ・ロウらの録音に欠かせないロサンゼルスのキー・プレイヤーだ。アラコイ・ピートも、カマシやシャフィーク・フセインからアダム・ルドルフまで重要作に参加してきた素晴らしいパーカショニストだ。もちろん、共に『No Place Is Safe』の録音にも参加した。「ライヴを重ねていくうちに、やっと理想の形が見つかった」という、このトリオでニアはキーボードを弾いて歌う。「ドラムを入れるとボーカルと被るからパーカッションの方が私には合っている」ともいう。アルバムの世界観を表現するのに、最小限のトリオは理想的な表現を成り立たせるようだ。アルバム同様に、音楽と向き合う時間の歓びを与えてくれる、そんなライヴになる予感がしている。