完熟りんご、里芋と根菜でパワフルにキックオフ!
[MONTHLY BEST CHOICE | SPECIAL JANUARY MENU]THIS MONTH'S SPECIAL MENU野菜のポトフ仕立て
ブルーノート東京・長澤宜久シェフが日本各地の生産者を巡りながら、食材との出会いをひと皿に紡ぐ「MONTHLY BEST CHOICE」。
今月は、冬の富山県高岡市で出会った「りんご」が主役。
2016年のキックオフに、長澤シェフはどんなひと皿を提案するのだろう?
汁たっぷり「完熟りんご」で提案する七草のスープ
「しっかり蜜を持ったりんごは肉との相性もいい。だって擦りおろしてカレーに入れたりするでしょう?和食では肉じゃがに入れるとおいしい」。そんな長澤シェフの話から始まった「今月のひと皿」談議。目の前に登場したそのひと皿は、シェフが富山県高岡市で出会った「国吉りんご」をごろごろっと刻み、豚肉の塩ファルシーやたっぷりの根菜とともにコンソメで炊き合わせた目にも新しいスープである。
豚肉の塩ファルシー(ロールキャベツ)は冒頭のシェフの話の裏付けなのだろうか?りんごと豚肉、その相性は気になるところである。「1月のこの時期だからこそ食べてもらいたい料理は"七草"です。本来は邪気を払い万病を除くための料理だけれど、疲れた胃をリセットしてパワーを注ぐためのものでもある。そんなひと皿を提案したいと思って行き着いたのがこのスープです」。
七草にちなんだセリ、大根、蕪をはじめ、ごぼう、タケノコ、しいたけ、しめじ、ネギ......。体を温める根菜もたっぷり。そこに、同じ高岡市で出会った滋味あふれる里芋も加えると無敵のレシピが完成した。いずれも丁寧にコンソメで炊かれた野菜や豚肉のロールキャベツは、甘爽やかなりんごの風味と驚くほど相性がいい。新年のライブのキックオフに、こんな贅沢スープで体を温めてみてはいかがだろう?
photography = Jun Hasegawa
text = Akari Matsuura
CHEF
長澤宜久(ながさわ・たかひさ)
ブルーノート東京グループシニアシェフ。'91年に渡仏し三ツ星「ラ・コートドール」他、名店で経験を積む。'01年に帰国後、南青山「アディング・ブルー」、丸の内「レゾナンス」シェフ、2013年全店舗のシニアシェフに就任した。
《REPORT》 冬の北陸で出会った
太陽の恵みたち。
漁港で知られる氷見のお隣、富山県高岡市。ここに作り手の情熱と愛情が育んだ素晴らしい食材がある。「富山でりんご?」「海藻肥料のアルギット農法?」。
いずれもちょっと聞き慣れない話だが、どんな出会いが待っているのだろう。
冬の北陸、富山県高岡市で出会った「国吉りんご」は、糖度が高く果汁もたっぷり。天然の甘みとほど良い酸味をたたえたそのりんごは、樹の上で完熟するまで200日間、愛情いっぱいに育てられた宝石のような果物だ。このりんごの作り手は、国吉農林振興会の代表を務める中島司さん。御年70歳を超えた、小柄だが矍鑠とした(柔和な笑顔がとてもチャーミングが)おじいちゃんだ。
高岡市西部に位置する4.9へクタールの農園は、県内最大級を誇る。周辺には市民の憩いの場、つつじ公園や三千坊山展望台などを擁している。今から約25年前(1990年)、中島さんがここでりんご栽培を始めた当時は「高岡でおいしいりんごが育つの?」といぶかしむ人も多かったそうだが、四半世紀をかけて作り手の想いが実を結ぶ。今では高岡市で知らない人はいない有名なりんご農園へと成長を遂げたのだ。中島さんのりんごづくりへの情熱に突き動かされた長澤シェフ、愛情いっぱいに育てられたりんごを主役に、新年の始まりを祝うひと皿を考案しようと心に決めた。
同じ高岡市内で、日本では珍しい「アルギット」という海藻を北欧から輸入し、米などの農作物やハーブを栽培している今城農園を訪ねた。北欧・ノルウェーの美しい海で、太陽と海の栄養分をしっかり吸収して育った100%天然海藻「アルギット」。そのアルギットを使用した「海藻アルギット農業」での米作りにはじまり、今では里芋やハーブの栽培にも力を入れている。国産海藻の何倍ものミネラルが含まれているアルギットを肥料に育った里芋は、滋味溢れる豊かな味わいが印象的だ。さて、"りんご"と"里芋"がどんな料理で出会うのか?ぜひお店でご体験あれ。