野菜からひらめくインスピレーションをひと皿に
[MONTHLY BEST CHOICE | SPECIAL MAY MENU ]大地・太陽・水・ひとの力がひとつになった
パワーみなぎる野菜を味わう
ブルーノート東京のフードメニューのなかで、ひときわ目立つ"野菜"の存在。シェフが自ら日本各地の生産者を訪れて、美しくて味のよい野菜を探し求めています。今回は、味と食感の豊かさと栄養価の高さから世界的ブームも起きている"野菜"にスポットを当てました。
photography = Jun Hasegawa
text = Tomoko Kawai
styling = Misa Nishizaki
野菜から沸き起こるインスピレーションを、
一皿の料理へと昇華
よい食材、生産者との出会いが、よい料理を生む。そんな考えから、日本全国の食材探しの旅を続けているブルーノート東京。シェフの小川卓美は、旅を通して「作る人と場所の違いで、野菜の味がこんなにも異なる」と驚嘆したと語ります。減農薬や自然栽培で大切に育てられた野菜と出会う度に「新しい野菜料理を作り、このうまみをお客様に届けたい」との気持ちを強めてきました。
春夏のグランドメニューには、産地直送の野菜の魅力を引き出した料理が並びます。石川・能登半島「あんがとう農園」のレモンバームや、熊本の海岸沿いで伝統的に栽培されている塩トマト、埼玉「須永農園」のサラダ野菜など、素材の味の強さをストレートに味わっていただけます。
シェフが生産者の方々と密接にコミュニケーションをとり、要望を伝えたり、旬の野菜を提案してもらう機会もあり、そのやりとりから思いがけない料理が生まれることも多くなりました。
2018年秋からは、須永農園とタッグを組んで、専用の畑がスタート。珍しいエディブルフラワーやハーブも栽培しています。生産者と料理人のセッションにより、進化し続けるブルーノート東京の野菜料理。大地からの恵みをほおばり、新しいおいしさを見つけてください。
小川卓美 (おがわ・たくみ)- 2001年ブルーノート・ジャパン入社。 '11年「Anjin」シェフに就任。'16年「ブルーノート東京」のシェフに就任。ライヴを聴きながら料理と音楽のセッションも楽しんで欲しいと言う願いを込め日々料理を提供している。
Farm to Table
2019年春夏のグランドメニューは、旬の恵みをとことん味わえる美味揃いです。力強さと繊細さが同居する、野菜の新体験を。
埼玉県の須永農園で栽培された「スイスチャード」を生のままピクルス液に漬け込みました。ピクルスにしても、葉軸部分の色鮮やかさと歯ごたえは失われず、甘酸っぱさの中にフレッシュなグリーンの香りが漂います。燻製香を効かせて仕上げた自家製スモークサーモン、濃厚なマスカルポーネと共に食べると、酸味が心地よいアクセントに。フェンネルの株と葉の清々しいアロマと相まって、夏らしい一皿に仕上がりました。
からし菜、グリーンケール、赤水菜、ディル、トレビスなど、旬の葉野菜とハーブを10種類以上盛り込んだサラダ。くるみオイルとマッシュルームの香りが土を思い起こさせて、食べた瞬間、森林浴のイメージが広がります。ミントやマジョラムなどのハーブも野菜と同等に捉えて、数種類を合わせながらふんだんに使用。一口ごとに異なる香りと風味が感じられて、野菜の多彩なおいしさに出会えるサラダです。
能登半島の農園で、完全無農薬・自然栽培で作られたレモンバームは、鮮烈なアロマが漂います。殻ごと食べられるソフトシェルのフリットには、しょうが風味の自家製スイートチリソース、みじん切りのバイマックルーを混ぜ込んだ手作りマヨネーズをからめてエスニックテイストに仕上げました。たっぷり添えたレモンバームと一緒に食べれば、芳醇な香りと甘辛い味のハーモニー。食べ出したらもう止まらない、やみつきの味です。
夏に向かって、どんどん甘さを増していくトマトを主役に、デザートのように楽しめる一皿が完成しました。塩トマト、ミニトマト「アイコ」をシェリービネガー、バルサミコ、はちみつ、マスタードで和え、甘口シェリー「ペドロヒメネス」をかけたリコッタチーズを添えています。トップには、甘くないカリカリ食感のグラノーラ。口の中で香ばしさが弾け、食べるごとにトマトの自然な甘みと乳製品のクリーミーな香りが広がります。