ワインメニュー、リニューアル。ミシェル・カミロがテイスティング
[MONTHLY BEST CHOICE | SPECIAL JUNE MENU ]極上のワインと音楽は、
感性を刺激し、人生を豊かにする
「時間とともに変化するワインの味わいは、徐々に熱気が増し終盤で最高潮に達するライヴのよう」。そう語るブルーノート東京ソムリエの今野明日香。この4月、公演で来日したピアニスト、ミシェル・カミロに新しいワインリストから2本を提案。さて、ワイン通のカミロを唸らせた一杯とは?
photography = Michika Mochizuki
interview & text = Tomoko Kawai
interpretation = Aki Ota
音楽もワインも、人生を豊かにするもの。
そして変化を楽しむもの
現代音楽界を牽引するミシェル・カミロは、ジャズ界きってのワイン通としても知られています。特にスペイン・リオハのワインに精通し、自宅には500本以上のワインコレクションを持つほど。また、モダン・キュイジーヌを愛する美食家でもあり、料理界に革命を起こした伝説のレストラン「エルブリ」の料理長フェラン・アドリアをはじめ、世界各国のスターシェフとの親交を深めています。ブルーノート東京公演の際には、シェフの料理とソムリエが選ぶワインとの類い希なマリアージュを楽しむステージ後のひとときを、心待ちにしていると語ります。
この5月にリニューアルしたばかりのワインリストから、ソムリエ今野明日香が2本を厳選し、テイスティングを楽しみながらのワイン談義が行われました。
来日公演の度に交流を重ね、彼の好みを知り抜いた今野。セレクトした1本目のワインは、スペインの内陸地テッラアルタの白「ガルナッチャ ブランカ エレンシア アルテス」です。
「これは興味深い。アルバリーニョのぶどうを思わせるけど、スパイシーさは少ない。ドライで涼しげ。そして余韻がすごくきれいなワインだね」と楽しげに語るカミロ。
「スペイン好きのカミロさんに、ぜひ飲んでいただきたくて選びました。このワインには標高が高く涼しい土地の特徴が表れています。果実のふくよかなうまみと微かに感じる塩味。夏の魚介、オリーブオイルを使った料理とも相性がぴったりなんです」と今野。
2本目は、イタリア・ピエモンテの赤「バローロ ピオチェーザレ」。今年はプーリアで交響楽団との共演を予定し、イタリアへの熱が高まっているというカミロ。グラスを持ち上げ「イタリアに乾杯!」と満面の笑みを浮かべます。
「エレガントな味と長い余韻。リオハ地区のコンティーノとニュアンスが似ている。それに、リベラ・デル・ドゥエロ地区のレゼルヴァのボディも感じるよ」。カミロは愛するスペインワインに例えます。
今野が「カミロさんの好みは、バローロと通じる」と考えてのセレクトは大当たり。そして、このワインにはソムリエとして日々ホールに立つ今野が考えるブルーノート東京の楽しみ方が凝縮されています。
「ライヴは非日常。ですからワインリストには、遊び心や特別感のあるワインを意識して入れています。時間の経過と共に開いて味と香りが変化していく。そんな特別なワインをライヴと共にじっくりと味わっていただきたい。この場所で過ごす夜を、音楽とワインで彩りたい」。
"素晴らしいワインは、素晴らしい音楽のよう。その背景や文化を知るほどに、愛情が強くなる。そして感性を刺激し、心を満たしていく"。テイスティングを通して、カミロと今野は共通の見解にたどり着きました。
新ワインリストは、日本の食材にするりと寄り添う日本ワイン、多様なぶどうを区画で分けずに栽培・醸造する混植混醸のポルトガルワインなど、今野が注目する産地・生産者が反映された充実の内容。一杯のワインから、新たな音と味覚への旅が始まります。
5月、ワインメニューがリニューアル!
本日のテイスティングはこちら
バローロ ピオ チェーザレイタリア、ピエモンテ/ネッビオーロ ¥14,256(税サ込)
柔らかな渋みとエレガントな余韻の調和が素晴らしく、
イタリアワインの王と称されるバローロ。
ガルナッチャ ブランカ エレンシア アルテススペイン、テラ アルタ/ガルナッチャ ブランカ ¥5,940(税サ込)
熟れた洋梨にハーブのアロマ。
ふくよかな果実味とキレの良い後味。魚介料理と共に楽しみたい白。
- MICHEL CAMILO (ミシェル・カミロ)
- 1954年、ドミニカ生まれ。ジャズ~ラテン~クラシックを横断するピアニスト。アンソニー・ジャクソンやマンハッタン・トランスファーとの活動が高い評価を得る。『ライヴ・アット・ブルー・ノート』はグラミー賞受賞。
- 今野 明日香 (こんの・あすか)
- ブルーノート東京ソムリエ。2015年ブルーノート・ジャパン入社。ワインの仕入れ、リスト作成、公演内容に合わせたワイン企画等を手がける。料理の細かなニュアンスをつかみ、互いを響かせ合うようなワイン選びが好評。