強烈な演奏を支えるサイモンの楽器論
怒涛のパフォーマンスで観客を虜にした「Protocol II」。
巨大なセットのワイルドなイメージと、繊細さやレスポンスの速さを
どちらも兼ね備えるサイモンの楽器の秘訣とは。
88年ミック・ジャガー初来日時のドラマーであり、ジェフ・ベックを始め近年はTOTO、上原ひろみと活躍を続けてきたサイモン。最新作はなんと25年ぶりのソロ作品!開演前から期待度も上がる。
ステージにはトレード・マークとも言える要塞ドラム・セット。「楽器を選ぶ理由はすべて音楽にある。より多くのトーンを欲しいと感じ、74年頃からタムをたくさん使い始めたよ」左右後方まで広がるセットを縦横無尽に叩き回る。オクタバンの音階的モチーフに乗せたポリリズムや変拍子、ツーバスを絡めたパフォーマンス・フレーズの度に客席が湧く。テクニカルな魅力の裏側で、彼が貫いている音への姿勢がある。「TAMAを長いこと使っているよ。深すぎないシェル、両面に同じ厚さのヘッドを使いミュートは基本使わない。自分の位置で判断せず、遠くに音を飛ばすんだ」実際、サイモンの生音のバランスは常に進化し続けている。繊細な音量でのグルーヴの暖かさから、ガッツリとバンドの中心になる極太サウンドまで驚くほどだ。連日パフォーマンスを間近で聞いても耳が疲れない。過剰な音作り無しに、ナチュラルにスケールがデカイのだ。さらに「楽器も大事だが、すべては手から来ているんだ」とタッチの重要性を語る。「優れたドラマー達は自分の手の音を持っているんだ。大事なのは、自分の手の音を如何に楽器で音にしていくかだよ」
今回のステージを見てドラムやバンド欲が湧いた人もいるのではないだろうか。そんな方にサイモンがアドバイスを残してくれた。「ドラムを始めるなら、とにかく音楽をたくさん聴いて演奏してほしい。私も音楽に合わせてひたすら曲を叩くのが好きだったんだ。テクニック的なことをトレーニングしたのはずっと後だったよ」
interview & text = Makito Yamamura
photography = Keisuke Akabane
cooperation = Rhythm & Drums magazine
- Simon Phillips(サイモン・フィリップス)
- ジャズ以外も含めセッション・プレイヤーとして活動を開始し、ミック・ジャガーのサポート・ドラマーを経てTOTOに加入。上原ひろみのアルバム『ALIVE』にも参加。
- 山村牧人(やまむら・まきと)
- 1964年生まれ。セッション・ドラマー。フュージョン隆盛期に育つ。かつて欧米、アジア諸国で触れた「生活に根ざすリズムや音楽」「現地で体験した音楽文化」の素晴らしさを日本の日常でも体現したいと願う50代!