黒田卓也の、最先端のジャズを生み出す往年の名器 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

News & Features

黒田卓也の、最先端のジャズを生み出す往年の名器

黒田卓也の、最先端のジャズを生み出す往年の名器

名門ジャズ・レーベルのUSブルーノートと契約という
日本人初の快挙を成し遂げたトランぺッターの黒田卓也。
現代ジャズ・シーンの最先端をいく、彼の愛器とは?

 ヒップホップ、ソウル、R&Bなど、あらゆるブラック・ミュージックとジャズのクロスオーバー化が進むNYのジャズ・シーンに、1人の日本人アーティストがいる。日本人で初めてUSブルーノート・レーベルと契約した、トランぺッターの黒田卓也だ。8月下旬には自己のクインテットで来日し、旧友のJUJUとともに熱いライヴを行なった。

READ MORE

 彼の愛器は、ヴィンセント・バックのストラディバリウス・モデル180ML。トランペット作りにおいて 90年の歴史を持つ、アメリカのバック社が生んだ名器で、黒田が手にしているのは1950年〜1960年代に製造されていた、通称"マウントバーノン・バック"と呼ばれるものだ。ブルーノ・ティルツ(6C)のマウスピースに合わせ、レシーバー(マウスピースとの接続部)が改造されている。

「古い楽器だから、日によって全然音が出ないときもあるし、何やコイツ!ってよく思います(笑)。でも、今風のサウンドのなかでヴィンテージな音が鳴ってるブレンド感が好きなんですよね」

 テクノロジーを駆使した音楽制作が当たり前の昨今、彼には大切にしているものがあるという。

「今はコンピューターで全部直しちゃう風潮があるけど、間違いがカッコ悪いなんて僕は思わないんですよ。僕が大好きな昔のジャズだってミステイクはあるし、でもそれがカッコ良かったりもする。この楽器はそういう人間的な不完全さとか、情緒的なものを残してくれるのかなと思います」

 これが、黒田の作る新しい音楽に、強烈な"ジャズの匂い"を感じさせる所以だろう。

「ステージは戦場でもあるし遊び場でもある。だから、リスクを持って遊ぶっていう感覚は常に持っていたいですね」

instrument
ピッチ・シフター(左の青)やオート・ワウ(その右)といったエフェクターも多用する
instrument
ベル部にはブランド名などが刻印されている。長年使い込まれた風格のある外観が渋い

photography =Takashi Yashima
interview & text = Kenichiro Kawahara
cooperation =Rittor Music

黒田卓也(くろだ・たくや)
兵庫県出身。現在はニューヨークを拠点に活動中。アルバム『 RISING SON』で日本人初のブルーノート契約アーティストとしてメジャー・デビュー。ホセ・ジェイムズなどのアレンジャーとしても活躍。
河原賢一郎(かわはら・けんいちろう)
1982年生まれ。神奈川県出身。リットーミュージック刊「サックス&ブラス・マガジン」「ベース・マガジン」をはじめ、楽譜集、楽器教本、WEBなど、音楽系メディアを中心に編集・執筆活動中。

RECOMMENDATION