世界No.1プレイヤーのサンボーンが長年使い続ける愛器 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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世界No.1プレイヤーのサンボーンが長年使い続ける愛器

世界No.1プレイヤーのサンボーンが長年使い続ける愛器

デヴィッド・サンボーンの愛器
世界No.1プレイヤーのサンボーンが
長年使い続けるアルト・サックスと
理想のサウンド・イメージに迫る

 世界的トップ・プレイヤー、デヴィッド・サンボーンの愛器と言えば、ヴィンテージ・サックス市場で最も人気の高い、セルマー社のマークⅥというモデルだ。なかでもサンボーンは、1960年代に製造されていた"14万番台"というシリアル・ナンバーのものを長年使っていて、彼のトレード・マークとなっている。

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「14万番台のマークⅥは3~4本持っているんだけど、これは1983年に手に入れたものだよ。実はそれまで使っていたサックスが盗まれてしまってね。それでマウスピースを買いに行ったんだが、そのとき偶然これと出会って以来、ツアーのメインとして使っているんだ」

 セルマーはフランスの一流老舗サックス・ブランドだが、サンボーンのマークⅥは通称"アメセル"と呼ばれるアメリカ工場製のもの。セルマーがアメリカで楽器を販売する際、フランスから楽器を輸出するのではなく、パーツをバラバラに出荷し、アメリカ工場で組み立てるという手法をとった。おそらくは関税料金などの問題(パーツ輸出の方が安かった?)でこのような手法が取り入れられたのだろうが、現在では古いアメセルがフランス本国製よりも人気を集めているのだから、世の中何が起こるか分からないものである。

「僕は何も古い楽器のマニアってわけじゃない。たまたまこれが、理想のサウンドが出せる楽器だったっていうだけなんだよ」

 "ではあなたの理想のサウンドとは?"と尋ねると、少し考えた後にこう答えてくれた。

「例えば水の中に石を落としたとする。石が水に直接当たった部分が狙った音だ。そこから広がる波紋みたいものが、みんなに感じてほしい音なんだよ。そういう余韻や倍音のある音が理想だね」

instrument
楽器全体のネジをすべてゆるめることで、響きが得られるとのこと。サムフックが動くほどネジがゆるい。

photography = Takashi Yashima
interview & text = Kenichiro Kawahara
interpretation = Kazumi Someya
cooperation = Rittor Music

David Sanborn(デヴィッド・サンボーン)
1960年代よりブルース/R&Bバンド等で活躍。1975年のソロ・デビュー以降、ジャズ/フュージョン界で人気を博す。エモーショナルなサウンドとプレイは圧倒的な影響力を誇り、その後のサックスという楽器の在り方さえも変えてしまったほど。
河原賢一郎(かわはら・けんいちろう)
1982年生まれ。編集者/ライター。サックス&ブラス・マガジン、ギター・マガジン、ベース・マガジン、大型ロック・フェスのパンフ、教則本、Webなどを中心に、編集・執筆を行なっている。

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