最初のオルガンは天使がくれたんだ。ドクター・ロニー・スミス | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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最初のオルガンは天使がくれたんだ。ドクター・ロニー・スミス

最初のオルガンは天使がくれたんだ。ドクター・ロニー・スミス

最初のオルガンは天使がくれたんだ

 白髭を蓄えたターバン姿のオルガン奏者ドクター・ロニー・スミス。
意外にも最新テクノロジーを駆使したステージを展開している。
そして相棒ルー・ドナルドソンとの間には楽器にまつわる因縁が。

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 ジャズ・オルガンと言えば、まずハモンドB-3を弾くジミー・スミスの姿を想起するだろう。ジャズ・オルガンの歴史を作ってきた偉大なるプレイヤーだ。彼以降のオルガン弾きはみな彼を師と仰ぎ、敬愛する。ドクター・ロニー・スミスもその一人だ。

「アルバムを聴いたときはピンとこなかった。でも教会で生演奏を聴く機会があって、その時のオルガンの音がすごく印象的だったんだ」

 ロニーもまたジミー・スミス同様ハモンドB-3をメインの楽器と位置づける。しかしステージに並んだ楽器を見れば、他のジャズ・オルガン奏者と異なることは一目瞭然だ。

 「コルグKronosとMacBookをパッド・サウンドに使っている。ローランドのハンド・パーカッションHPD-20も気分が乗ったときに叩いているよ。でも出しゃばりすぎないようにしている。メインはオルガンだからね」

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ハモンドB-3の上にはMacBookのコントロール用にコルグmicroKEYが2台置かれている
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コルグKronos脇のMacBookはMainStageというソフトウェアでステージ用音源として使用

 彼は杖を使用している。実はこの杖もまた楽器らしい。

 「世界に一台しかない楽器だよ。元々はスティックというタッピング奏法のための弦楽器だ。僕は杖をつくので、スティックとステッキの両方を持つのは嫌だから一体化してもらったんだ」

 そしてメインはハモンドB-3。

 「最初のオルガンは天使がくれたんだよ。地元の小さな楽器店にオルガンが置いてあって、毎日通って弾いていたんだ。そのうち店の経営者から自宅に呼ばれてね、ドアを開けたらB-3がドーンと置いてあった。そして"ここから自分で運び出せるなら君にやるよ"と言われた。雪の降る寒い日だったけど、必死に運んだよ。弾き方や操作方法は自分で学んだ。そのオルガンは大事に自宅に置いていたんだけど、ジャック・マクダフに貸し出したら行方不明になった。結局ルー・ドナルドソンのところにあるのを発見して取り戻したんだけどね(笑)」

photography = Takashi Yashima
interview & text = Tetsuji Ooyama
interpretation = Kazumi Someya
cooperation = Rittor Music

Dr. Lonnie Smith(ドクター・ロニー・スミス)
1942年、ニューヨーク生まれ。60年代後半から活躍、頭にターバンを巻いたスタイルで独特な存在感を放つ。ルー・ドナルドソンが67年に発表した「アリゲーター・ブーガルー」ではジョージベンソン等と競演し、ソウル・ジャズの幕開けに欠かせない存在。
大山哲司(おおやま・てつじ)
書籍編集部/キーボード・マガジン編集長などを歴任した後2007年に株式会社リットーミュージックを退社。現在はフリーのライター/エディターとして活動中。ピアノ弾き語りライブも行っている。

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