ガッドが絶対的な信頼を寄せる愛器達
ガッドが絶対的な信頼を寄せる愛器達
驚異的なダイナミクスの幅広さを誇るガッドのドラミング。
楽器に求めるのは瞬間の感情に素直に応えてくれるレスポンス、そしてソフトからラウドまで思い通りに表現できるレンジの広さだ。
今年70歳の節目を迎えたドラムの神様、スティーヴ・ガッド。彼がスティーヴ・ガッド・バンドで使用した楽器は、トレード・マークである黒いヤマハのドラムとジルジャンのシンバル。これらを長く使い続ける理由は「何と言っても使い心地の良さ。これでいい思ったらなかなか変えようと思わないんだ」今回のバス・ドラムは音楽性を考慮して小さめの20インチを選択。材質もタム類のバーチに対して「バス・ドラムはメイプルがしっくりくる」と語り、ライヴでも輪郭の明確な音色でリズムを心地よくプッシュしていた。チューニングに関しては叩いた感触を重視し「音が良くてもタッチやレンポンスが気に入らなければ納得しない」と強調。シンバル類は「薄くて抑揚が豊かなものが好みだ。スティックがシンバルに食い込むようなソフトなタッチを求めている」とのことで、ライドにはオーケストラ用を使用した。
「ハイハットは2年前に長年愛用した60年代のKジルジャンが劣化してから模索を続けているんだ。足で踏む音も大切だから色々こだわるとなかなか決まらないんだよ」
今回のチョイスはAカスタムだが、トップ(上側)に本来はボトム(下側)用となるシンバルを配し、ボトムにはクラッシュ用にリベット(鋲)を打ち込んだものを組み合わせているのも珍しい。ガッドは70歳になってなお進化を続けている。
「新しい奏法を試すのは好きだし、今でも機会があれば練習するよ。ジョギングをして食事にも気を使う。酒も煙草も止めたんだ」
そして最後に表現力を磨くためのアドバイス。
「練習する時は自分の叩きやすいレンジだけで心地良くなってはダメ。もっと強く、あるいはもっと弱くと色々なレンジで叩き分けて、ダイナミクスの幅を広げることが大切なんだ」
photography = Takashi Yashima
interview & text = Yusuke Nagano
interpretation = Kazumi Someya
cooperation = Rittor Music
- STEVE GADD(スティーヴ・ガッド)
- 1945年、ニューヨーク州ロチェスター生まれ。76年に「スタッフ」、80年代に「ガッド・ギャング」を結成。西のハーヴィー・メイソン、東のガッドとして人気を二分する存在で、エリック・クラプトンの強い要請でツアーに参加し多くのロック・ファンも虜にした。
- 長野祐亮(ながの・ゆうすけ)
- 様々なレコーディングやアーティストのサポートに参加するセッション・ドラマー。リズム&ドラム・マガジンや教則本の執筆、ドラム・スクールなどを通して後進の指導も積極的に行っている。