[インタビュー|MY INSTRUMENT]三宅純
極彩色のサウンドは
ジャズの極北
パリを拠点に独自の世界観で作曲家活動を続ける三宅純。
3000作以上のCM音楽の中にはカンヌ国際映画祭の受賞作も。
映画監督ヴィム・ヴェンダースなど異業種の
クリエイターからも絶賛される「ジャズの極北」とは?
「あらゆる音楽様式が飽和しているのが現代。僕がやっているのは、様々な音楽の異種交配」
そう静かに語る彼の音楽は、東欧、アラブ、南米などのエキゾチシズムを感じさせる楽曲をはじめクラシック、ボサノバ、ジャズなど世界中の音楽を取り込み、独自の世界観によってそれらを見事に調和させることによって奏でられる、極彩色のボーダレスサウンドだ。
楽曲の大半でフェンダーローズとピアノを担当したが、今回の公演でも彼のルーツであるトランペット系の演奏を聞くことができた。利用した楽器は合計3本。まずウードも入ったエキゾチックな楽曲で使用したのはモネットの、なんとフランペット!アート・ファーマーが愛用していたモデルで、フリューゲルホーンとトランペットの中間の楽器にあたる。どこか懐かしくもある独特の音が曲の構成を鮮やかに彩る。次に吹いたのは同じくモネットのフリューゲル。
「吹くときは、ステレオタイプのジャズにならないように注意している」と本人が語るように、暗闇で動物がむせぶような、中世の角笛のようなアーシーでプリミティブな音色が特徴的だった。最後のフリューゲルはベンジ。こちらは20歳のころから40年近く利用している一番の古株で、本人曰く「吹いていて一番しっくりくる」とのこと。ちなみにフリューゲルのマウスピースは「モネットのオリジナルマウスピースは音が明るくなりすぎるから」という理由でモネットもベンジも同じジャルディネリの10FLを使用している。
「僕は80年代にジャズは終わったと思っているし、これからもジャズの『様式』を追求するつもりはない。でもジャズを『常にイノベーションを続けるスリリングな音楽』と位置付ければ、今でもメンタルではジャズをやっているつもりだ。そういう意味では、僕の作る曲はジャズの極北かもしれない」
三宅 純の挑戦はまだまだ続く。
photography = Hiroki Obara
Interview & text = Satoshi Ookoshi
Cooperation = Rittor Music
- 三宅 純(みやけ・じゅん)
- 1970年代、まだ高校生の時に日野皓正に認められ、バークリー音楽大学に留学。その後は作曲家として数多くのCM、映画音楽、舞台音楽を手掛ける。リオオリンピックの閉会式で演奏された「君が代」のアレンジは世界を魅了した。
- 大越 聡(おおこし・さとし)
- 大学時代は中央大学スウィングクリスタルオーケストラ、明治大学ビックサウンズオーケストラ、慶應大学KBRモダンシャックスなどでリードトランペットを担当。現在は某ビジネス専門誌の編集長をつとめる。