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[インタビュー|MY INSTRUMENT]ロン・カーター

[インタビュー|MY INSTRUMENT]ロン・カーター

ロン・カーターのピッコロ・ベース

ジャズの歴史に偉大な足跡を残し今もなお挑戦を続ける伝説的なベース・プレイヤー。衰えを知らないチャレンジ精神はこのユニークな楽器にも宿っている。

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 1963から68年にかけてマイルス・デイヴィスの伝説的なクインテットで活動し、革新的なベーシストとして不動の地位を築いたロン・カーター。彼がその後ピッコロ・ベースを使い始めたのは、リーダーとして活動するために必要だったからだという。「ステージでは、いつもソロを取る人がリーダーだと思われている。だから私も、ベースより高い音の出る楽器を使ってバンドの前に立つ必要があると思った。それで、ニュージャージーの友人フレッド・ライマンにアイディアを伝えて、小型のピッコロ・ベースを作ってもらったんだ」

 通常のベースよりも4度高く調弦し、彼自身「フレンチ・ホルンを演奏するような感覚」だというピッコロ・ベースを弾くために最初に組んだのは、ケニー・バロン(p)にベン・ライリー(dr)、バスター・ウィリアムス(b)という名手を擁するカルテットだった。彼らの演奏はニューヨークのクラブ、スウィート・ベイジルでのライブ盤『Piccolo』(1977年)で聴くことができる。その後彼は、フランス製でほぼ同じサイズのオールド楽器と出会い、10年ほどはそれを使っていたが、今回ノネットでの来日公演で彼が持ってきたピッコロは、75歳の誕生祝いにスタンリー・クラークとレニー・ホワイトから贈られたものである。フランス製の楽器はピッコロとしては大型で、近年ではツアーで持ち運ぶのが難しくなっていた。ふたりから贈られた楽器は小型で音も良く、大いに気に入っているという。「彼らのことは大好きだよ。もちろん、プレゼントをもらう以前からね(笑)」

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ピックアップはデイヴィッド・ゲージのリアリスト・サウンドクリップとフィッシュマンのフルサークルを併用
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楽器の裏には「"Ron Happy 75" from Stanley and Lenny」のメッセージを刻んだプレートが貼られている

 来年80歳を迎える彼だが、今もこのノネットの他、自己のトリオやカルテット、リシャール・ガリアーノ(accor)やジャヴォン・ジャクソン(ts)それぞれとのデュエットなど、幅広く精力的な活動を続けている。「どこで仕事をしても、新たにやるべきことが見つかる。私にとってそれはとても大事なことなんだ」

photography = Photography = Takashi Yashima
Interview & text = Akira Sakamoto
Cooperation = Rittor Music

Ron Carter(ロン・カーター)
1937年生まれ。10歳でチェロを始め、後にベースに転向。イーストマン、マンハッタン両音楽院で学ぶ。59年にチコ・フリーマンのバンドでプロデビュー。以来2000枚以上のアルバムに参加。ソロ作も40枚以上。

坂本 信(さかもと・あきら)
札幌市出身。レコード会社や音楽出版社、楽器メーカーのための翻訳、数百人のアーティストの取材や通訳を務める。ベーシストとしても活動し、高崎晃やマイク・オーランド、伊藤たけし、仙波清彦などと共演。

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