[インタビュー|MY INSTRUMENT]チャ-ルス・ロイド
ひたすら美しく壮大なチャ-ルス・ロイドの
音楽を体現する名器
30年ぶりにブルーノートに復帰し最新作『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』を携え
ブルーノート東京でも情感溢れる名演を繰り広げた彼の愛器は
もはやトレードマークともいえるConn。
チャールス・ロイドがブルーノート東京に帰ってきた。しかもブルーノート・アーティストとして!若手ピカイチのリズムセクションに、「空間デザイナー」ともいえるギタリスト、ビル・フリゼールを擁した新たなバンド「ザ・マーヴェルス」、新作の『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』を従えて。初日のセカンドセットはまるで静寂の中で青く燃える炎の様な、凝縮されたエネルギッシュな美がそのままクラブを満たし、100分を超える熱演となった。
チャールスが愛用するテナーサックスはConn社製(1920~30年代)。レスター・ヤングが愛したことでも有名でだが、今ではチャールスのトレードマークになっているともいえよう。「昔はセルマーとかいろんな楽器を吹いていたんだよ。でも、ある日、そう、あれは確かエリック・ドルフィーと一緒だったな。楽器店に行って、店頭にあったConnを吹いたんだ。そしたら、そのサウンドに一発でやられた。それからConnを使っているんだよ」
エレキギターが流行する以前に最も売れた楽器はサックスであった。当時のConnは、アドルフサックスによって「発明」された黎明期のサックスの甘く柔らかいサウンドを残しており、21世紀の現在も演奏家の心を掴む名器なのである。「私は子供の頃から歌うのが好きで、シンガーになりたかった。9歳からサックスは始めたけれど、楽器もマウスピースも自分がストレスなく自由になれる事が第一でね」テナー以外にもアルトフルート、ハンガリーの楽器、タロガトー等もよくチャールスは演奏するが、その事について訊くと「音色だよ!」との答え。色彩感豊かな「画家」である。思いのままに描ける、それにつきると。インタビューの途中、楽屋に置いてあったConnのテナーを指差して「ああ、あれはレスターの楽器だったんだよ」と一言。チャールス・ロイドジャズは歴史を生き、今まさに現在進行形で創り続けているのだと強く印象づけられた夜であった。
Photography = Takashi Hoshino
Interview & text = Kunikazu Tanaka
Interpretation = Kazumi Someya
Cooperation = Rittor Music
- CHARLES LLOYD(チャールス・ロイド)
- 1938年メンフィス生まれ。幼少時より音楽に親しみ、以来60年にわたってリーダー作『フォレスト・フラワー』の大ヒット等を含む活躍で、テナーサックスの巨匠としてジャズの歴史に名を刻む。
- 田中邦和(たなか・くにかず)
- 1966年生まれ。Connを使用する日本のトッププレイヤーとしてライブ、レコーディング等マルチに活躍。4月のKenKen's party 「Glad to meet you」 公演でブルーノート東京に出演する。