[インタビュー|MY INSTRUMENT]sébuhiroko
ピアノとして弾くには一番良い
世武裕子が全員キーボードというユニークな編成でライブを行った。
ステージ上にズラリと並んだ5人分のシンセサイザーはまさに壮観。
解体ショーと形容するライブの意図と、楽器選択の理由を伺った。
この日世武が自分が弾くキーボードとしてチョイスしたのはコルグのKRONOS。88鍵のワークステーションシンセだ。
「生ピアノを使おうかとも思ったんですが、音の混ざり方の良さや自分が中央にいた方が良いと考えてデジピにしました。その上でピアノの音色が一番良いと思ったのがKRONOSです。それにペダルの踏み具合で伸ばしたい音を伸ばしたままにして弾きまくれる。ピアノという楽器として弾くには一番良いと思ったんです」
世武はソロのステージでもKRONOSを使うことがあるという。
「KRONOSは鍵盤の音域で音色を振り分けて弾けるしドラムの音も充実しています。ソロのステージでは左手でドラム・パートを弾きながら右手でピアノを弾き、足鍵盤でベースを弾いて歌うこともある。もう1台シンセを置いてソロを弾けば自分だけで完結するんです。私は鍵盤の上にいろいろな物を置くので、KRONOSはパネルにスペースがあってあまり傾斜していない点もいいんですよね」
今回のステージはキーボードが5人というユニークな編成。なぜこういう編成にしたのだろうか。
「解体ショーみたいなものですね(笑)。自分自身の打ち込みで作った『L/GB』というアルバムを出したんですが、それをステージで再現しようと思って。リスナーの方は、音源を聴いてもなぜこういう音になっているのか分からないと思うんですよ。ドラムの音ならドラマーがいて、そこから音が出てると思う。でもドラムの音でも違うところから出てくることもある。誰がどこのパートを演奏していて、何が積み重なってこういう音になっているのかを見てもらいたいと思ったんです。そして打ち込みの面白さと生の人がいる面白さを感じてほしい。だからステージではレコーディングに使った楽器をみんなに振り分けて弾いてもらっています」
Photography = Takashi Yashima
Interview & text = Tetsuji Oyama
Cooperation = Rittor Music
- 世武裕子 (せぶ・ひろこ)
- パリ・エコールノルマル音楽院映画音楽作曲科を首席で卒業。NHK朝ドラ『べっぴんさん』を始めドラマや映画のサウンドトラックを多数手がけるほか、シンガー・ソングライターとしても活躍。2016年11月に新作『L/GB』をリリースした。
- 大山哲司(おおやま・てつじ)
- 株式会社リットーミュージックで書籍編集部、キーボード・マガジン編集長などを歴任したのちに退社。現在はフリーのライター/エディターとして活動中。ピアノ弾き語りライブも行っている。