[インタビュー|MY INSTRUMENT]キャンディー・ダルファー
クイーンが無敵になれる楽器
1990年の衝撃的デビューから25年以上も他の追従を許さずエンターテイナーとしても輝きを増しているファンキー・サックス・クイーン、キャンディー・ダルファーの愛器とは?
ニューアルバム『Together』を携えて一年ぶりに来日したキャンディー・ダルファー。8公演、全てフルハウスという絶大なる人気は衰退する気配がない。彼女にとって近年はプリンスの他界などハッピーな出来事ばかりではなかった。心の奥底にある複雑な感情を伝える為に、信頼できるウルコ・ベッドやアイヴァン・ペロディのような長年寄り添うバンドメンバーや共作者の存在、より開放的になれるアルトサックス『アムステルダム・ウィンズ』が必要だ。
「この楽器はオールドの楽器より音程が取りやすく、音量も出て、表現の幅がどこまでも広がるの。スペースがあって、吹き込むことができるのよ」
元分子生物学者であるサックス・メーカーのフリソ・ハイティンハがある日突然、プロトタイプ(試作品)のサックスを彼女の元へ持ってきて、その時からずっと同じ楽器を使っているのは、彼女の理想に限りなく近いから。
「マウスピースは『Sax Point』と言うお店で8年前に製作したの。これも試作品でオットーリンクの9番くらいの開きがあるからとてもヘビーで、プロフェッショナル仕様よ。小さな音で吹きたい時にもすぐに反応し、大きな音で吹きたい時はどこまでも開放してくれる。リードはパリッとしたものが合うの」バンドーレンのZZの2半のリードをつければ無敵だ。
常に新しい音楽を開拓している彼女にとって、バンドの中で埋もれない明るいサウンドが出せることは重要。AKGのワイヤレスマイクは今年システムをアップデードし、時にAKAIのEWI 4000Sをボコーダーとして披露している。甘い香りを漂わせながら観客の中に飛び込んで演奏するスタイルも健在だ。
「JB(James Brown)のようなことがやりたいの。サックスが一番大事だけれど、歌うことを取り入れたらもっと楽しいわ」
プレイ、香り、ファッション、彼女の全てで大胆に表現し、観客に生きる勇気を与える。まさに、我々を魅了してやまないクイーンだ。
photography = Takashi Yashima
interview & text = Miho Terachi
cooperation = Rittor Music
- CANDY DULFER(キャンディー・ダルファー)
- 1969年、アムステルダム生まれ。1990年に1stアルバム『サンクシュアリティ』をリリース。グラミーにノミネートされ世界で100万枚を突破するセールスを記録。2002年にはプリンスの『ワン・ナイト・アローン・ツアー』に参加。
- 寺地 美穂(てらち・みほ)
- 札幌生まれ。ニューヨーク州立大学在学時にサックス奏者としての活動を始め、2016 年アルバム『Beautiful Magic』でビクター エンタテインメントよりメジャー・デビュー。