[インタビュー|MY INSTRUMENT]デヴィッド・スピノザ
トップ・セッションマンの職人的音楽愛
長年にわたりニューヨークのスタジオ・シーンのトップ・ギタリストとしてその名を轟かせたデヴィッド・スピノザ。柔和な笑顔で自身のサウンドの秘密や貴重な思い出を語ってくれた。
スティーヴ・ガッド・バンドの一員としてやってきたスピノザが今回抱えていたのは、愛器フェンダー・テレキャスターではないギターだった。
「元々は25年前に入手したサドウスキーなんだけど、8割がた改造されていてほとんど別のギターといってもいいくらいなんだ。今回はマイケル・ランドウの書いたメロディを弾くからトレモロ・ユニットのついたギターが必要でね。ならこれが使えるなと思って25年ぶりに出してきた。それにアーム・バーを使うと女の子が喜ぶんだよ!」
そうお茶目に笑う彼だが、曲を活かすためにベストな方法を常に考える職人肌の音楽家だということはコメントの端々から伝わってくる。
「ジェームズ・バートンやロイ・ブキャナンなどのテレキャスター・プレイヤーが好きで、ホーン入りのR&Bにハマっていたけど、ウェス・モンゴメリーやジム・ホールからジミ・ヘンドリックスまで聴いていたし、8歳からクラシック・ギターも習っていた。最初はCM音楽の仕事をしていたので、先生についてオーケストレーションも学んだよ。そうしたことをジェイムス・テイラーのプロデュースなどにも活かすことができた」
盟友スティーヴ・ガッドとの出会いについて聞くと興味深い答えが帰ってきた。
「彼は20歳、僕が16歳だった。当時僕はR&Bバンドでギターを持たずにフロントで歌ってたんだけど、地元でマーヴィン・ゲイの前座をやることになってね。ところがマーヴィンのバンドのドラマーが急に来られなくなって、音楽学校にいたスティーヴが譜面が読めて腕がいいってことで推薦されたらしいよ。いきなり初見ですべての曲を叩いていた。数年後にとあるセッションで偶然再会したんだけど、彼も僕のことを覚えていたみたいで。あれっ?ギターも弾くの?って」
Photography = Takashi Yashima
Interview & text = Yoichi Aoyama
Interpretation = Kazumi Someya
Cooperation = Rittor Music
- DAVID SPINOZZA(デヴィッド・スピノザ)
- 1949年、ニューヨーク生まれのギタリスト。60年代から多くのスタジオ・セッションで活躍。ポール・マッカートニーやジョン・レノン、ポール・サイモン、ダニー・ハサウェイから野口五郎、矢野顕子まで、その参加盤は膨大だ。
- 青山陽一 (あおやま・よういち)
- 1963年、長野市生まれのギタリスト/シンガー/ソングライター。80年代後半からグランドファーザーズで活動後、'92年より開始したソロ活動も28年目。近年は音楽誌での執筆も数多い。