[インタビュー|MY INSTRUMENT]ジョン・マッケンタイア
"会話"を成立させる"声=ドラム"
シカゴ音響派を牽引、ポスト・ロックの先駆、トータス。そのサウンドを創造するジョン・マッケンタイアに聞くドラム・セットの在り方とダブル・ドラムのねらい。
シカゴ音響派の代表格、トータス(TORTOISE)の名盤『TNT』(1998年発表の3rd)の完全再現が話題となった来日公演(2020/2/9〜2/11)。その創造の中心にいるのは、もちろんドラマーのジョン・マッケンタイアである。バンドには彼の他にジョン・ハーンドンとダン・ビットニーの2人がドラム・セット、キーボード、マリンバを行き来して、向かい合わせにセットされた"ダブル・ドラム"でパフォーマンスが展開される。
「通常は、2人で同じことを叩くユニゾンで、ヘヴィに響かせる。ただし、ジョニー(ハーンドン)とダンの組み合わせでは、2つのヴォイス用に完全にコンポーズされたパートもあるんだ」
本国では、C&C DrumsとCymbal & Gongという地元オレゴンにあるメーカーのドラム、シンバルを愛用するマッケンタイアが持参したドラム関連の"楽器"はたったの2つ。1つは、スネア・ドラムの打面ヘッドに載せるSNAREWEIGHT #5で、削り出しブラス・ボディ+レザー・インサートによるダンパー効果でマフリングする逸品だ。
「オーバー・トーンを取りたいから、スネアは必ずミュートする。ダイナミクスの幅も広がるよ」
さらにもう1つは、TACKLEのStick Bagで、VATERのPower 5B(スティック)、Vic Firth American Custom Timpani General T1(マレット)、マリンバ用マレットのMIKE BALTERの23R(青)、Vic FirthのM32(緑)が収まる(写真参照)。
「ドラム・セットは自分にとっては重要な楽器さ。メインでもあるし、きちんと学んだ楽器でもある。このバンドには3人のドラマーがいるから、それによって柔軟性が増して、アプローチも幅広くなる。それに僕たちのサウンドは"会話"だから、いろんな"声"があっていいんだよ」
その言葉にこそ、トータス・サウンドの真髄があるはずだ。
Photography = Takashi Yashima
interview & text = Katsuaki Komiya
Interpretation = Kazumi Someya
Cooperation = Rittor Music
- JOHN McENTIRE(ジョン・マッケンタイア)
- 1970年4月9日生まれ。アメリカ・オレゴン州ポートランド出身、ドラマー/マルチ・プレイヤーで、エンジニア、プロデュサーの顔も持つ。トータスの他、ザ・シー・アンド・ケイクなど、その活動は多岐に渡る。
- 小宮勝昭(こみや・かつあき)
- ドラマー/パーカッショニストとして演奏活動をメインに執筆/編集もこなす。即興〜歌ものまで、かんぱち、土偶崇拝などのバンドでも活動。著書『"ドラム脳"のつくり方』(リットーミュージック刊)も絶賛発売中。