[インタビュー|OFFSTAGE]ピート・エスコヴェード&シーラ E.親子にインタビュー
メロディックで色鮮やかなドラムス。
初共演は、シーラがコンガのヘッドに手が届かなかった5歳の時。
40年以上のパートナーだからこそ息の合う演奏を聴かせてくれる。
ピート・エスコヴェードとシーラ・E.はオフも一緒に過ごしている。
「ハ――――――――――――イ!」
ステージに上がったシーラ・E.が両手を高くかざして客席を煽り、ドラムセット前でスティックを握る。
「カッコい―――――――――い!」
女性オーディエンスの声が飛び交う。
そのやり取りの間にスタンバイしたシーラの父、ピート・エスコヴェードがコンガを叩き始めた。すぐにシーラが応える。バーン! バスドラムとフロアタムを同時に打つので、地鳴りのように響く。会場全体がピート&シーラ父娘色でキラキラと輝いているように感じるから、ラテンミュージックは楽しい。
「ドラムスやパーカッションはメロディックな楽器なんだよ。ヘッドのほかにシンバルやリムやシェルやカウベルを鳴らして、スティックのほかにブラシや素手で叩いて、音楽に色彩を加えていくんだ」
そう話すピートは、若い頃、兄弟でバンドをやっていた。練習場は自宅。バンドが演奏する周囲で遊ぶ彼らの子どもたちの中には、娘のシーラもいた。
「シーラはハイハイでドラムスに近寄り、よじ登って叩いていた。幼いころからいいドラマーだった」
しかし、父は娘にはヴァイオリンを習わせた。女の子にはラテン音楽の打楽器よりもクラシックのシンフォニーを奏でてほしかったのだ。
「それなのに、シーラ本人はドラムスに夢中で、親にはどうすることもできなかったよ」 パーカッショニストとしてのシーラのデビューは5歳の時。カリフォルニアのステージだった。
「あの夜のことはよく憶えているわ。うちのおばあちゃんが私に白いきれいなドレスを着せてくれて、ステージに上がっていくと、客席のざわめきがどんどん大きくなっていった。そして、パパに紹介されて、椅子にのせられて、コンガを叩いたの。まだ背が低すぎてヘッドに手が届かなかったから」
それ以来もう40年以上、ピートとシーラの父娘は共演を重ねている。
「パパがヴァイオリンを習わせてくれたことにはとても感謝している。打楽器の演奏家でありながらメロディを奏でる心を持てるようになったのはヴァイオリンのおかげ。そして、クラシックを学んだことで、ジャンルの垣根を意識せずに音楽を愛する心も育った。だからこそ、その後のキャリアでR&Bやロックの音楽家たちと共演できたのだと思う」
ピート・エスコヴェード・ラテン・ジャズ・オーケストラ featuring シーラ・E.
2014 6.28 sat. - 6.30 mon.
photography = Takuo Sato
シーラのドラムスもメロディックで彩り豊かだ。彼女のスネアドラムは、リズムを刻むだけでなく、タムのようにも使う。それによって音楽を色鮮やかに演出していく。「アルマ・デ・カーニヴァル」「ラ・クーナ」「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」......。ブルーノート公演ではどの曲も父娘の域はぴったり。2人で1人のミュージシャンのようだ。
「パパと私はプライベートでもいつも一緒。別々にすんでいるけれど、会話をかわさない日はないくらい。それは東京へ来ても同じ。今朝も2人で食事をしたし、明日は一緒に原宿のキディランドに買い物に行く予定よ。何を買うのか? って。たぶんパパは曾孫たちへのお土産ね。前回日本に来た時は、私はハロー・キディがデザインされたテニスシューズを買った。オフの時間も一緒だからこそ、ステージの上でおたがいが何を考えているか、何をしたいのか手に取るようにわかるの」
photography = Hiroyuki Matsukage
text = Kazunori Kodate