[インタビュー|OFFSTAGE]テリ・リン・キャリントンとリズ・ライトにインタビュー
打楽器奏者だからこそ自由に音楽を生み出せる。
抜群の演奏技術を披露するドラマーのテリ・リン・キャリントン。
そこにシンガーのリズ・ライズが加わるとエンタテインメントに。テン・リンのショーは 1回のステージで何色もの音楽を楽しめた。
クライマックスはショーの中盤にやってきた。ドラムセットの前に座ったテリ・リン・キャリントンが、ゲストシンガーのリズ・ライトをステージに招く。照明がステージ上の 2人を浮かび上がらせる。「ネイチャー・ボーイ」、そして「オープン・ユア・アイズ」をドラムスとヴォーカルだけで披露した。
「打楽器と声のデュオは、もっとも原始的な音楽のかたち。その魅力を客席にも体験してほしかった」
終演後、リズが楽しげに振り返る。
「テリ・リンの音楽はとても知的。そこに私が加わることによって、作品がポップな物語になるのをわかっていただけたかしら。テリ・リンと私の出会いは、6年前のパナマのジャズ・フェスティバルでした。音楽の相性がいいことはすぐにわかりました」
音楽のある局面では 2人ともシンガーであるかのように語り合い、また別の局面では2人とも楽器であるかのように響く。1曲の中でさまざまな融合を楽しむことができる時間帯だった。
「リズはとてもナチュラルに体を鳴らします。少しブルースのテイストが混じるところも魅力です。今は正統派のジャズシンガーが少なくなっているでしょ?そんな時代に、彼女は古典的なジャズを深みある声で歌うことができる貴重な存在です」
テン・リンもリズの存在を讃えた。
さて、9月13日、14日に2日間4公演行われたテリ・リン・キャリントン featuringリズ・ライトの公演は、テリ・リンが 2013年にグラミー賞ベスト・ジャズ・インストゥルメントを受賞したアルバム『マネー・ジャングル』の曲を中心に演奏された。
店側のオファーにはそう応じた。
「授賞式会場で私の名前が呼ばれた瞬間は驚きと幸せな気持ちが一気にわきあがってきました。10歳でプロの音楽家になって、およそ40年続けてきたすべての努力が報われた気持ちになりました」
テリ・リンのグラミー受賞アルバムは、デューク・エリントンがマックス・ローチとチャールズ・ミンガスとのトリオで録音した1983年の名盤へのオマージュ。「マネー・ジャングル」「ウィグ・ 「アフリカの花」ワイズ」などを収録している。
「なぜデューク・エリントンだったのか─世界中で質問されるけれど、その答えは私にも見つからないの。あのアルバムをクリエイトし直したいと、ある日思った。音楽が私にうったえかけてきました」
「打楽器奏者としての私の強みはリズム感とグルーヴ感。それを示すアルバムになったと思います」
ステージではもちろんオリジナル曲も演奏した。
テリ・リン・キャリントン featuring リズ・ライト
2014 9.13sat. - 9.14sun.
photography = Hiroyuki Matsukage
「ドラマーの私がどうやってメロディを生み出すか、不思議に感じるリスナーは多いみたい。確かに私はメロディ楽器をうまく演奏できない。だから、ほとんどの曲は頭の中で作ります。頭の中で鳴ったメロディをどうやって楽器で再現するかを考えるのが私の作曲法です。お察しの通り、メロディ楽器奏者と比べるとやっかいな作業です。でも、強みもあります。ピアノやギターだと手が動きやすい範囲で作曲してしまう傾向があるでしょ。でも、私の場合、まったく自由に音楽が生まれていきます」
photography = Hiroyuki Matsukage
text = Kazunori Kodate
- Terri Lyne Carrington(テリ・リン・キャリントン)
- 20年以上、ハービー・ハンコック、デヴィッド・サンボーン、カサンドラ・ウィルソン等のツアーに参加。エスペランサ・スポルディング等との『モザイク・プロジェクト』ではグラミー賞を受賞。
- Lizz Wright(リズ・ライト)
- スピリチュアルな歌声でオリジナリティ溢れる世界を創り上げるシンガー。ジョー・サンプルのバンドメンバーとして初来日、ブルーノート東京のステージに。デビューアルバムは『ソルト』(2003)。