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[インタビュー|OFFSTAGE]ラウル・ミドンにインタビュー

[インタビュー|OFFSTAGE]ラウル・ミドンにインタビュー

1本のアコースティックギターで
オーケストラのような響きを生む。

 ギター、ヴォーカル、マウストランペット......。
1人で果てしなく立体的な音の世界を生むラウル・ミドン。
唯一無比の音楽は楽器と自分との一体化から生まれる。

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 世界的ギタリスト、ラウル・ミドンは1年の半分は旅の空の下にいる。2014年12月のブルーノート東京のショーも、カナダ、北米全域、フランス、オランダ、イギリスとツアーをまわり、日本に入った。

「このショーが終わったら、久しぶりに帰宅できるよ。数日はギターに触れずに手首を休めるけれど、その後は毎日弾く。常に触れていることで、ギターが自分の体の一部分になっていくんだ」

 ラウルの音楽は大宇宙だ。たった1本のギターから無限の可能性を感じるからだ。

「ギターという楽器は、僕はオーケストラだと思っている。弦楽器であり、打楽器であり、ある時はピアノのような音も奏でられるからね」

 オーケストラを意識したのは活動の拠点をニューヨークに移した2002年の頃だったという。アメリカ南部のニューメキシコで生まれ育ったラウルは、大学卒業後にジョニファー・ロペスやフリオ・イグレシアスのバンドで演奏した後NYへ。この街のミュージシャンたちのレベルの高さに驚愕した。

「当時の僕は雇われギタリストだった。NYで驚いたのは、技術の高いギタリストなんて何千人もいるということ。ソロアーティストとしてデビューするにはどうすればいいか─。僕は毎日考えたよ。NY一の速弾きギタリストを目指しても、絶対に誰かにかなわない。1音聴いただけで誰もが僕だとわかる演奏をしなくてはいけない。そこで、オーケストレーションを追い求めることにしたんだ」

 そのプロセスの中で、ジャズとブルースを基本にしながらも、クラシックやラテンなどさまざまな要素を取り込んだラウルだけのスタイルが生まれた。

 ラウルのギターはジェフ・トラウガードというカリフォルニアの職人の手によるスペシャル仕様だ。

「ドイツのスプルーズとブラジルのローズウッドでできている。ローズウッドは熱帯雨林保護の対象になっていて、今は伐採が禁じられてしまった貴重な木材。それをジェフは正規のルートで手に入れて、ボディもネックもすべて手作業で作ってくれた。このギターは、弦をはじくとボディ全体がバイブレートする。それが僕の体まで伝わり響かせる。ギターから生命を感じるほどだよ。僕にとって、ギターは愛する女性であり、愛する子どもでもある。だから体に密着させて優しく抱え込むようにして弾くんだ。愛情を持って演奏すればするほどギターは僕の体の一部になっていく。そして、僕と楽器の親密度が増すと、楽器のちょっとした個性や強みやコンディションがわかるようになる。その微妙な感覚を上手に生かして演奏すれば、僕だけの音になるんだ」

 こうしてできたオーケストラのような音に、ヴォーカルとマウストランペットが加わり、ラウル・ミドンの世界が作り上げられる。

「マウストランペットは、マイルス・デイヴィスやクリフォード・ブラウンのフレーズの真似から始まった。口ずさんでいたら音程が正確になっていったんだ。遠くからだと口笛に見えるかもしれないけれど、実は歌っているんだよ。僕は幸運にも歌も歌えるけれど、歌が好きだけどうまく歌えないから楽器を選ぶ演奏家は多いよね。それと同じ発想で生まれたのがマウストランペットだった」

live photo

ラウル・ミドン
2014 12.10 wed. - 12.11 thu.

RAUL MIDÓN(ラウル・ミドン)
米ニュー・メキシコ州出身。盲目というハンデを抱えながら歌い続け、05年に『ステイト・オブ・マインド』でデビュー。同作にはスティーヴィー・ワンダーやジェイソン・ムラーズが参加。ジャズ、ラテン、ソウル等、多彩に取り込み個性的なサウンドを作り上げる。

photography = Hiroyuki Matsukage
text = Kazunori Kodate
interpretation = Kazumi Someya

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