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[インタビュー|OFFSTAGE]アート・リンゼイにインタビュー

[インタビュー|OFFSTAGE]アート・リンゼイにインタビュー

リオとNYのサウンドの間をゆらりと行き来。

 緩やかなボサ・ノヴァかと思って聴いていると、
突然ラウドなギターで会場の空気を切り裂くアート・リンゼイ。
そのサウンドに法則はなく、衝動に支配されている。

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 弦が緩く張られた12弦ギターを弾きながら、ソフトな声で歌うアート・リンゼイ。バックはパーカッションとナイロン弦のギター。アコースティックの柔らかい演奏だ。ところが、突然、それまでの雰囲気のすべてを破壊するかのように、ギターでラウドなノイズを爆発させる。会場の空気が一変する。ノイズは巨大な爆音もあれば、窓ガラスを生爪でひっかくように神経を刺激する音もある。
「緩やかなブラジルのサウンドと、会場の空気を切り裂くようなアバンギャルドなニューヨークのサウンド。オーディエンスには、このまったく違って聴こえる2つの音楽の間を僕が気楽に行き来しているように感じてほしい。それが楽しいんだ」

 いったいどんなタイミングでギターがラウドになるのか、初日のショーの後、ブルーノート東京のPAスタッフに確認した。しかし「タイミングは予測できません。突然です」という回答だった。
「そりゃあ、PAにはわからないだろうね(笑)。だって、僕自身にもわからないから。法則なんてないんだ。バックで鳴っている音楽を聴いていたり、目の前の客席に友人や知り合いのミュージシャンの姿を発見したり、何かがスイッチになってガッ! っと気持ちが高みに行くんだ。長い間音楽をやることで、できあがってきたスタイルだよ。ガッ! っと行くと客席の空気が変わる。そして今度は僕の演奏も変わる。客席によって僕の演奏が変わることは、必ずしもいいと思っていないけれど、やっぱり、おたがい影響し合うのがライヴの魅力だからね」

 どうしても気になるのが、見た目がゆるゆるのギターのチューニングだ。弦の張り方はどういう工夫をしているのだろうか―。

「僕のチューニングはほかの多くのギタリストとはまったく違う。自分が弾きやすいテンションで、ゆるくしてあるからね。あくまでも感覚でしかない、僕だけのチューニングとしか答えられない」

 アート・リンゼイは、アメリカ人であるものの、10代までのほとんどをブラジルで過ごし、ニューヨークでパンクをやった後、今またリオ・デ・ジャネイロを拠点に音楽活動を行っている。ニューヨークとリオが融合して、今のスタイルになったのだ。

「リオと比べると、ニューヨークのほうがはるかに音楽を作る環境が整っている。世界中の新しい音が集まってくるし、ライヴも充実している。音楽産業の規模も巨大だ。ただ、今の僕はリオに魅かれることは多い。ブラジルの音楽はリズムが強烈だ。ギターには弦楽器の要素と打楽器の要素が求められる。そして、ポップミュージックだったとしても、コードが複雑で、どこかに必ず洗練されたジャズの要素がある。最近、僕はやっとリオの音楽シーンの内部に入りつつある。ブラジル音楽が、ボサ・ノヴァやサンバだけではなくものすごく多岐に渡っていることがわかってきた。それぞれの音楽のそれぞれのミュージシャンの要素を取り入れて、僕の新しい音が生まれる予感がしているよ」

live photo

Photo by Tsuneo Koga

アート・リンゼイズ・レストレス・サンバ
guest : 小山田圭吾(6.9 tue.)、ジム・オルーク(6.10 wed.)
2015 6.9 tue. - 6.10 wed.

ARTO LINDSAY(アート・リンゼイ)
1953年生まれ。3歳から18歳までブラジルで過ごし、78年に<DNA>を結成しニューヨークの前衛音楽シーンで注目を集める。84年、アンビシャス・ラヴァーズ結成、80年代からはカエターノ・ヴェローゾ等ブラジルのミュージシャンのアルバムをプロデュースしている。

photography = Hiroyuki Matsukage
text = Kazunori Kodate
interpretation = Kazumi Someya

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