[インタビュー|OFFSTAGE]渡辺貞夫さんにインタビュー | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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[インタビュー|OFFSTAGE]渡辺貞夫さんにインタビュー

[インタビュー|OFFSTAGE]渡辺貞夫さんにインタビュー

全員が"自分のための演奏"と感じてくれることが理想。

 渡辺貞夫さんとケニー・バロン、ジャズ界のレジェンドを
エネルギッシュな若手のリズムセクションが支えたショウは、
生々しさと、温かさと、ハプニング溢れる豊かな3日間だった。

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 アップテンポの曲は歌うよう、バラードはとろけるような演奏だった。渡辺貞夫さんのブルーノート東京公演は、ジャズの魅力をたっぷりと楽しめる3日間6公演のショウ。ピアノはスペシャルゲストのケニー・バロン。フィーチャリングでベン・ウィリアムス(ベース)とユリシス・オーエンス・ジュニア(ドラムス)を迎えてのカルテットである。

「リハーサルでは、曲のテンポなどおおまかな指示だけして、あとは自由に演奏してもらいました。それでも僕のコンセプトをメンバーがキャッチし、ステージ上で同じムードを共有した演奏になりました。彼らは、自分の解釈や経験値に縛られずに、その時の僕の気持ちを感じてくれた。だから、僕もステージ上のハプニングを楽しむことができました」

 ケニーとは40年ぶりの共演だった。
「僕がホストを務めていたFMのラジオ番組『マイ・ディア・ライフ』のスタジオ・セッションに参加してくれたことがあって。でも、実は、僕はすっかり忘れていてね。失礼してしまいました」

 ベンとは、ここ数年で何度も共演している。 「アルバムでも、ライヴでも、ずいぶん共演しています。彼はまだ若いのに、いい感じで熟してきていますよね。ベースラインも人柄も素直なところが、僕はとても気に入っています」

 ユリシスのドラムスには特に個性を感じた。 「こちらの予想を裏切る演奏をするのが魅力です。リハーサルの前に彼のドラムセットを叩いてみたんですよ。すると、タムがすごく響く。これでいいの? と思いました。ところが彼自身が叩くといい鳴りになる。自分独自のチューニングなのでしょうね」

 ビー・バップの原体験を持つ貞夫さんとケニー。ジャズでは若手といえるベンとユリシス。世代を超えたカルテットだからこその魅力も楽しめた。

「ベンたちは自分の味を出しながらも、僕とケニーが気持ちよく演奏できるように付き合ってくれていました。そして僕たちは、若い彼らのエネルギーを感じながら演奏を楽しめました」

 貞夫さんのショウは、演奏はもちろん、ステージ上の"風景"も楽しい。メンバーのソロに耳を傾ける姿、下手側後方でアルトサックスのリードをチェックする佇まいや動きにはキャリアと品を感じる。

「リードはとても慎重に選んで、場合によっては1、2曲で取り替えます。1枚1枚個性が違い、会場との相性があり、音の持続も違うんですよ。僕は、出来る限り生音に近い演奏を客席に届けたい。そして、客席後方の席までしっかりと音をキャリーさせたい。そこにいる1人1人のために演奏できる、1人1人が自分に向けての演奏だと感じてもらえるのが理想です。そのために、さまざまな試みをしています」

 こうした姿勢はデビュー以来、音楽家としてのキャリアを60年以上重ねてもまったく変わることはない。

「楽器は本来無機質なもの。だから、納得できる音になるまでに時間が必要です。毎日、時間の許す限り楽器に触れ、息を吹き込んでいます」

live photo

Photo by Tsuneo Koga

渡辺貞夫 with special guest ケニー・バロン
featuring ベン・ウィリアムス、ユリシス・オーエンス・ジュニア

渡辺貞夫(わたなべ・さだお)
1933年、栃木県生まれ。アルトサックス・プレイヤーとして数多くのバンドのセッションを経て、62年にバークリー音楽院(現バークリー音楽大学)に留学。日本を代表するミュージシャンとして世界を舞台に活躍。写真家としての才能も認められ6冊の写真集を出版している。

photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Kazunori Kodate

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