[インタビュー|OFFSTAGE]矢野顕子さんにインタビュー | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

News & Features

[インタビュー|OFFSTAGE]矢野顕子さんにインタビュー

[インタビュー|OFFSTAGE]矢野顕子さんにインタビュー

ブルーノート東京のショウは、ちょっと特別なの。

 矢野顕子トリオのブルーノート東京初出演は2003年。
それからほぼ毎年、住まいのあるNYから帰国し公演を行っている。
ショーを重ねた今、この会場だからこその心持ちがあるという。

READ MORE

 矢野顕子トリオのショーの中盤、会場の空気ががらりと変わった。矢野さんがアメリカのシンガーソングライター、ジョナサ・ブルックの「TIME」を歌った時だ。母親の介護がテーマのこの歌を矢野さんは歌詞の1語1語を大切に伝えていった。

 「私はずっとジョナサの大ファンです。そんな彼女と個人的に接点を持つことができたのは2011年。彼女も私も参加した、東日本大震災の後にニューヨークで行われたベネフィットコンサートでした。その時彼女に、もっとコンサートをやってください、とお願いしたら、ちょっと困ったような反応でね」

 ジョナサには、実はプライベートの事情があった。当時、彼女は母親の介護をしていたのだ。
「昨年、ブロードウェイのシアターで、ジョナサは介護体験をモチーフにした作品を公開しました。彼女の歌とモノローグで進んでいく物語です」

 ジョナサのショーは2部構成。その幕間、客席にはバスケットに入ったティッシュが配られた。
「後半は客席中が号泣するからです。母娘の関係といっても、介護は戦いでもあります。いつもいつも仲よくしてはいられません。涙あり、笑いあり、そして、ラストで彼女が母親を看取る、そのクライマックスに歌われた曲が『TIME』でした」

 介護の現実を考えさせられ、親子の愛情を考えさせられ、命の尊さを考えさせられる、この物語と音楽を日本でも伝えたい。矢野さんは強く思った。その最初が今回の4日間8公演だった。

 さて、矢野顕子トリオが初めてブルーノート東京のステージに上がったのは2003年。まだ日本人ミュージシャンの出演が少なかった時期だ。

 「当時はアンソニー・ジャクソンとクリフ・アーモンドとのトリオで、どちらかというと演奏を聴いていただくショーでした。各パートのソロの時間も長かったし、アドリブも多かった。私は演奏技術の高い2人に引っ張られる感じでした。それに対して、今のウィル・リーとクリス・パーカーとのトリオは、歌を聴いていただくショーです。2人は私の歌が客席にしっかりと伝わる演奏をしてくれています。3人で曲を作り上げていく喜びは大きいですね」

 矢野さんの公演は特に回数を重ねる度に洗練度が高くなっていく。音楽が磨かれていくのはもちろんだが、矢野さんのおしゃれ度も増し、相乗効果で客席の男女も着飾るようになっている。

 「ブルーノート東京は、私にとってちょっと特別なの。この店のお客様は、音楽を楽しむと同時に、その夜ここを訪れることも楽しみにしているでしょ。誰と観ようかしら。どんな服を着ていこうかしら。何を食べようかしら。私のほうが皆さんの街を訪れるコンサートツアーとは違って、遠くから来てホテルに泊まるかたもいらっしゃる。そういうお客様も満足していただけるような雰囲気、お洋服は意識しています。コンサートにはコンサートだからこその魅力があるけれど、ブルーノート東京のショーはまた違った魅力も体験していただきたいですね」

live photo

矢野顕子トリオ
featuring ウィル・リー&クリス・パーカー

矢野顕子(やの・あきこ)
東京生まれ、ニューヨーク在住。76年アルバム『JAPANESE GIRL』でデビュー、81年に「春咲小紅」が大ヒット。幅広いミュージシャン達との交流を持ち、ポップスのフィールドに居ながらもジャンルにとらわれない自由な活動を続ける。この9月には新作『Welcome to Jupiter』(SPEEDSTAR RECORDS)をリリースした。

photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Kazunori Kodate

RECOMMENDATION