《CIRCLE OF LEGENDS vol.3》「師から友人へ」―リー・リトナー、インタビュー
>> [vol.1] 時代と共に受け継がれるエッセンスが今のジャズに結びつく
>> [vol.2] オランダを代表するレジェンド親子の競演
《CIRCLE OF LEGENDS vol.3》LEE RITENOUR & DAVE GRUSIN
2015 11.3 tue. ‒ 11.5 thu.「師から友人へ」―リー・リトナー、インタビュー
コンテンポラリー・ジャズ/フュージョンのスタープレイヤー、
リー・リトナーにとって、デイヴ・グルーシンは師であり"永遠の友情"で結ばれている。
今回はその出会い等を振り返りながら、新作や来日公演への思いを語っていただいた。
取材場所に表れたリー・リトナーは柔和にして、爽やか。彼が話す"I"は"僕"でも"私"でもなく、"ボク"と記した方がしっくり来る。と、書けば、その物腰は分ってもらえるだろうか。そんな彼のセルフ・カヴァー中心の新作『ツイスト・オブ・リット』は40年近くのソロ・キャリアを括るような内容を持つ。
「オリジナルで出していたものを下敷きに、今まで積んで来た体験や、今日ある技術を用い、今のものにしようとした。また、ミュージシャンについてもデイヴ・グルーシンやパトリース・ラッシェンとか昔の友達を呼び、そこに新しい奏者を重ねることもした」
朋友とも言えるデイヴ・グルーシンは、3曲に参加。おもしろいことに、ピアノ、オル ガン、シンセサイザーと、彼は曲ごとに異なる楽器を弾いている。
LEE RITENOUR & DAVE GRUSIN
featuring ABRAHAM LABORIEL & CHRIS COLEMAN
「違った楽器を弾いてほしいと言ったんだ。彼はいろんな楽器で、いろんな音を出し、曲種を高めることができるからね。昔、彼はクインシー・ジョーンズの録音に呼ばれて、そういう事ばかりやっていたんだから(笑)。そして、その手腕は何より彼の映画音楽にも表れているし、それこそはすごい才能だと思う。だから、ボクも今回、彼のそうした美点を出してほしかった」
映画やTVの音楽で活躍するグルーシンに、高校生の頃から憧れていたという。そんな彼がグルーシンに会ったのは、19歳の時だった。
「最初に会ったときのことはよく覚えているよ。19歳で、ボクはセルジオ・メンデス&ブラジル'66のレコーディングに参加した。それで、彼の家のパーティに行ったら、デイヴ・グルーシンもいたんだ(彼はブラジル'66のオーケストレーションを担当していた)。しばらくして、デイヴはいくつかの仕事で19歳の僕を使ってくれ、そしたら僕のスタジオの仕事は急に忙しくなっていった(笑)」
その後、一緒にジェントル・ソウツを組んだり、双頭アルバムを作ったり。いつ間にか先生と生徒であったのが友達の関係になり、今は永遠の友情で結びついていると、彼は微笑む。この夏も一緒に欧州や米国を回った。そして、11月にはブルーノート東京公演を持つ。
「今から楽しみだよね。何度やっても、デイヴとの演奏は歓びがある。たとえば、僕のギターの周りで弾く、彼のピアノってもう最高。それは格別のものと言いたくなる。デイヴが弾くと彼の流儀が満ちあふれ、どんな曲でもデイヴの曲になってしまう(笑)」
そう語る様は、まさに少年のよう。そして、それはギターを語る際も同様だ。「ギターはすごい楽器だ。まだまだつきつめられていないし、僕にとっては、どんどん進化している楽器でもある」と、ギター熱はまだまだ冷めていないご様子。かように何かにつけてポジティヴな彼は、LAの生活も満喫しているという。
「LA的なものは、音楽に自然に出てくるものと思うな。ぼくはハリウッドで生まれ、ハリウッド育ち。なんか。幸せだよね(笑)」
photography = Atsuko Tanaka [portrait], Great The Kabukicho[live]
interview & text = Eisuke Sato
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- 佐藤英輔(さとう・えいすけ)
- 音楽評論家。LAと聞くと、まず頭に浮かぶのはザッパとリトル・フィートとフィッシュボーン。リーさんの寛いだ様に触れて、久しぶりにLAに行きたくなりました。ヤシの木が立つ広い道を流すと、GRP 系の音がはまります。