[インタビュー|OFFSTAGE]リアノン・ギデンズ
カテゴリーに収まらない音楽を続けたい。
リアノン・ギデンズの初来日公演は素朴で野性的な声で、
音楽を聴きつくしているリスナー層までも魅了した。
その声の原点はオペラの発声法にあるという。
ドラムス、ベース、ギター、バンジョー、フィドルなど、アコースティックの楽器をバックに野性味あふれるたくましい声が会場に響いた。3月に2日間4公演行われたリアノン・ギデンズのショウの客席には、いつもにもまして音楽評論家やジャーナリストの姿が多くみられた。音楽を聴きつくした、いわば"玄人"たちも魅了するアーティストなのだ。
「ブルーノート東京のお客さんたちは、とても熱心に聴いてくれています。その集中力がステージに伝わってきて、私のエネルギーになりました。私は生まれながらのシンガー。父も母も歌うことが好きで、幼いころから毎日歌ってきました。そういう家庭環境だから、迷わず音楽学校へ進み、オペラの発声法を勉強して、声に磨きをかけました」
彼女の音楽はアメリカン・ルーツ・ミュージックにカテゴライズされることが多い。しかし、それに対してはかすかに抵抗を感じているという。
「確かに、私が今歌っているのは過去の音楽を今に提示する音楽です。そういった意味では、アメリカン・ルーツ・ミュージックと言えるのかもしれません。でも、カテゴライズに収まりきらない音楽をやっている自負はあります。アメリカの音楽はもとをたどれば、別の大陸から来た音が混ざっている、異文化が融合された音楽ですから。ただし、レコード会社としては、私の音楽を売るためにジャンル分けは大切。そういう実情はもちろん理解していますが」
今回の公演は彼女の最新作『TOMORROW IS MY TURN』のリリースのタイミングで行われ、アルバムの中から「LAST KIND WORDS」や「DON'T LET IT TROUBLE YOUR MIND」などが歌われた。
「アルバムタイトルは"明日は私の番"という意味。タイトルチューンはYouTubeでニーナ・シモンが歌う姿を観ました。気持ちがすごくわかった。私の時代がきっと来る─。ニーナは信じていたと思う。彼女は時代を先駆けしていたシンガーだったから。えっ、私はどうかって? 自分の時代が来るかどうか、自分自身のことについては想像もつきません。今はただ、前へ前へと歩いていきたい。そして、シンガーとして行けるところまで行きたい。そのために何が必要なのかは、いつも考えています。次のアルバムには、もっとたくさんのオリジナル曲を収録したい。それが、現段階での私の次のステップです」
さて、彼女は日本に興味を持ち、アメリカの大学では日本文学も専攻していたそうだ。
「高橋留美子さんの漫画やアニメに興味をもったのがきっかけでした。好きな作品は『らんま1/2』。そして『犬夜叉』です。神話的な要素が気に入っています。高橋さんというと『うる星やつら』を挙げる人もいるけれど、私には理解できなかったかな。日本への興味のスタートは漫画だったけれど、その後は文学も好きになりました。『源氏物語』も全部読んでいます。いつか日本語で読めるようになりたい。私は漫画だけでなく日本文学も読むことをこのインタビュー記事に必ず書いてくださいね」
Photo by Tsuneo Koga
- Rhiannon Giddens(リアノン・ギデンズ)
- 1977年生まれ。バンジョー、フィドル、ギターなど様々な楽器を手がけ、リード・ シンガーを務めるキャロライナ・チョコレート・ドロップスではグラミーも受賞。この4月にリリースされたヨーヨー・マの新作にも参加している。
photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Kazunori Kodate
interpretation = Kazumi Someya