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[インタビュー|OFFSTAGE]ミシェル・カミロ & トマティート

[インタビュー|OFFSTAGE]ミシェル・カミロ & トマティート

切なさ、儚さ、旅情、2人の親交......を音で表現。

情熱的でアグレッシヴな演奏でリスナーを圧倒してきたピアニストのミシェル・カミロとギタリストのトマティート。デュオでは音の空間まで美しいバラードで客席を魅了した。

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 アンコールナンバー「アバウト・ユー」が客席の空気をほぐし、鎮静させていく。励ますようなピアノ。ささやきかけるようなギター。音符と音符の間の鳴っていない空間まで優しい。11月に4日間8公演行われたミシェル・カミロとトマティーノのショウは、切なさや儚さがたっぷりと表現された。

「最後の「アバウト・ユー」は僕が作曲したララバイです。皆さんには穏やかに今日を終えていただきたい。その思いを込めて演奏しました」

 このミシェルの曲が象徴するように、2人の最新デュオアルバム『スペイン・フォーエヴァー』はロマンティックなバラードの作品集。ブルーノート東京のショウもアルバムと同じ曲順でスタートした。

「2000年に『スペイン』、'06年に『スペイン・アゲイン』を作って、今作は僕たち2人の完結編です。だから、変わらぬ親交を音楽にしたくてね。ロマンティックなバラードを選びました」

 ミシェルも、トマティートも、情熱的でアグレッシヴなイメージが強い。しかし、その印象とは正反対の音楽性を体験できるショウになった。

「ミシェルが生まれたドミニカも、僕が生まれたスペインも、激しく強い音楽を演奏する文化、伝統を持つ国です。だから、いつもは力のあるリズムやメロディでリスナーの心を支配するような演奏をします。でも、一人の音楽家としての僕は、愛情あふれるロマンティックな演奏は大好き。それを今回のアルバムとショウで実現できました。うれしいよ」

 トマティートも呼応する。

「音の鳴っていないスペースが大切」

 これが2人の合言葉だそうだ。エグベルト・ジスモンチ作の「水とワイン」、エンリコ・モリコーネの「ニュー・シネマ・パラダイス」など、2人のそれぞれのステージとは異なるアプローチが続き、客席の色が変わっていくように感じる。

「ステージでは、僕もミシェルもおたがいの音の余韻を楽しみました。響きを聴いて、目で合図しながら次の音をつむいでいった。僕たちにとって、とてもミステリアスな体験になりました」

 今回は特に音で描く風景も意識したそうだ。

「僕はトマティートに「ニュー・シネマ・パラダイス」や「黒いオルフェ」など映画音楽も提案しました。会場にいる1時間半か2時間、オーディエンスに音で描く景色や異国の旅も体験してほしかった」

 ミシェルによると、ブルーノート東京でのデュオは2人にとって特別の意味も持つ。

「僕たちの初共演は1997年。バルセロナのパウラでラムスカでした。ダブルビルで、アンコールで2曲だけ共演した。その時の客席の熱狂がものすごくて、僕たちはツアーに出ようと決めた。2年続けたツアー中、このブルーノート東京での演奏を録音して自宅へ持ち帰った。あらためてそれを聴くと、素晴らしい演奏でね。デュオ1作目の『スペイン』をレコーディングするにいたった。この店で過ごした夜がCDを生むきっかけになったのです」

live photo

Photo by Tsuneo Koga

MICHEL CAMILO & TOMATITO
- Spain Forever -
2016 11.22 tue.-11.25 fri.

MICHEL CAMILO(ミシェル・カミロ)
1954年、ドミニカ生まれ。ジャズ~ラテン~クラシックを横断するピアニスト。79年渡米、アンソニー・ジャクソンやマンハッタン・トランスファーとの活動が高い評価を得る。『ライヴ・アット・ブルー・ノート』はグラミー賞受賞。
TOMATITO(トマティート)
1958年、スペイン生まれ。"スペインの至宝"、"パコ・デ・ルシア以降最高"とも称されるフラメンコ・ギター奏者。ミシェル・カミロとのデュオは97年にスタート。アルバム『スペイン』は世界的ヒットを記録。

photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Kazunori Kodate
interpretation = Aki Ota

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