[インタビュー|OFFSTAGE]レイラ・ハサウェイ
私の声は繊細なオーボエ。さらに磨きをかけたい。
最新曲がグラミー賞候補になっているレイラ・ハサウェイが、
一昨年のクリスマスに続き、2016年も年末に登場。
その低く繊細な声が客席の隅々まで響きファンを魅了した。
2017年2月発表の第59回グラミー賞最優秀R&Bパフォーマンスに「Angel」でノミネートされているレイラ・ハサウェイが、2016年12月に来日。ブルーノート東京のステージで、この「Angel」や第56回の同賞を受賞した「Somethin'」などを歌った。
「グラミーにノミネートされたことにはものすごく興奮しています。今こうして話しながらもドキドキしているくらい。今回のショウは、キャリアのスタートから現在にいたる、シンガーとしての私の節目に歌った曲や影響を受けたアーティストのトリビュート作を中心にセットリストを組み立てました。ブルーノート東京のステージからは客席の顔がよく見えるので、一人一人と会話をする気持ちで歌っています。大きなホールと違って、会場に来てくれた全員に私の音楽が届いていると思うことができますね」
レイラの父親はR&Bのレジェンド、ダニー・ハサウェイ。その父親の大名盤『ライヴ』が録音されたトルヴァドール・シアターで、2015年にレイラもライヴレコーディングした。タイトルは『レイラ・ハサウェイ・ライヴ』。今回のショウでは父娘ともに歌った「Little Ghetto Boy」も披露した。
「父のトルヴァドールのライヴアルバムは、子どもの頃から何度も何度も聴きました。同じステージに立てた夜はとても不思議な感覚でした。まぶたを閉じると、父と同じ客席の風景が見える気がして。1列目にはどんな服の女性がいたのかな? 3列目のお客さんはどんなお酒を飲んでいたのかな? 想像しながら歌いました。父と一緒にいる思い出って、ほとんどないんです。彼は私が幼い頃にこの世を去ったので。だから、母や、父の友人や、共演したミュージシャンたちから聞かされた話が、いつのまにか私自身の父の思い出になっています。父の伝説に恥ずかしくないように、常にベストのパフォーマンスを心がけて今度は私が新しい伝説を作りたい。うちの家系は、母も、祖父母も、みんなミュージシャンです。その代表として歌っている自負もあります」
今の自分の声を維持するために、レイラは煙草も喫わず、アルコールも控えめにしている。
「君の声は力強くブロウするトランペットではなくて、低く響くオーボエということを忘れてはいけない。そうマーカス・ミラーに言われてからは、特に喉を大切に扱うようにしています。怒鳴るなんてもってのほか。会話も、笑う時も、できるだけ声を小さめに心がけているくらい。チャカ・カーンのような声量のあるシンガーの歌を聴くとうらやましく感じることもあるけれど、私は今の自分の声が好き。レコーディングやショウの前には、歌詞を何度も読み込んで、主人公の気持ちをイメージし、風景を思い描きます。あくまでも自分流ですけれどね。ただ、私には合っている方法だと思います。作品の解釈をジョー・サンプルに褒められたことが励みになって、自分を信じられるようになりました。これからも、喉を大切にして、オーボエのような繊細に響く声をやさしくやさしく熟成させていきたい」
Photo by Makoto Ebi
LALAH HATHAWAY
2016 12.10 sat. - 12.12 mon.
- LALAH HATHAWAY(レイラ・ハサウェイ)
- 1968年、シカゴ生まれ。父親はダニー・ハサウェイ、母親もオペラ歌手という音楽一家に育つ。 クルセイダーズの「ストリート・ライフ」をはじめとするヒットのほか、スナーキー・パピー、ロバート・グラスパー等との共演作では3年連続グラミー賞を受賞。
photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Kazunori Kodate
interpretation = Kazumi Someya