[インタビュー|OFFSTAGE]マリア・シュナイダー
デヴィッド・ボウイを感じる新曲、演奏しています。
6月に3年半ぶりに来日したマリア・シュナイダー・オーケストラ。
作曲家としてのマリアの中にあるギル・エヴァンスの遺伝子、
デヴィッド・ボウイの遺伝子について語ってくれた。
「ブルーノート東京では3回目の公演ですが、ここのオーディエンスは世界一だと、私は思っています」
6月の5日間10公演の前夜、滞在するホテルのラウンジで、マリアは身を前に乗り出して話し始めた。
「この店のお客さんは曲名の紹介だけで、表情を輝かせて反応してくれます。ショーは生き物。会場が盛り上がれば演奏の質は高くなります。私は客席の照明を明るくするように頼んでいるほど。だって、会場からエネルギーをもらいたいでしょ? ブルーノート東京のお客さんはニューヨークにも観に来てくれるんですよ。私は毎年11月末、東27丁目のジャズ・スタンダードで演奏しています。そこまで訪ねてきて激励してくれる。感激しています」
ギル・エヴァンスやボブ・ブルックマイヤーから手ほどきを受け、オーケストレーションを学んだマリアだが、近年は、デヴィッド・ボウイとのコラボレーションでも注目された。
「ギルのオーケストラにかかわったのは20代の頃。ハワード・ジョンソン、マーク・ジョンソン、ルー・ソロフなどが在籍していた時期に、アシスタントとして働いていました。ギルには、音楽の概念にとらわれず、セオリーを壊す勇気を教えられました。ある日突然、ギルに譜面の書き直しを命じられとことがあります。やってみろ、と。キャリアもない私はどうしていいかわからず、音楽大学で学んだ基本に忠実に、各楽器の特性を重視して、心地よいアンサンブルになるように譜面を書きました」
ところが、譜面を見たギルが大声で叫んだ。
「なんだこれは! やめてくれ!」
すぐに自分で手直しを始めた。
「彼はトランペットのパートは下げ、トロンボーンは上げました。楽器の持ち味に逆らう指示です。どうなってしまうのかしら......。私は不安でした。ところが、緊張感のある音楽が見事に完成しました」
デヴィッド・ボウイは、ジャズ・スタンダードに突然現れたそうだ。しかしその時は、直接話はできなかった。終演後にはすでに姿は見えなかったのだ。後日、デヴィッドのマネージャーからメールが届く。
「デヴィッド・ボウイがあなたのCDを聴きたいと言っています」
そう記されていた。
「自分のCD1枚1枚に、あなたが聴いてくださるなんて信じられない、というメッセージとサインを書いて送りました。もちろん電話番号も添えて」
ある日、マリアがニューヨークからボストンへ向かうアムトラックに乗っていると、電話がかかってきた。覚えのない電話番号表示におそるおそるでると、覚えのある声が響いた。デヴィッド本人だった。
「一緒に曲を書かないかい?」
その電話をきっかけにデヴィッドの「スー(オア・イン・ア・シーズン・オブ・クライム)」が生まれた。
「彼は私の曲の中で、特に暗いテイストを気に入ってくれました。今回のブルーノート東京で演奏する「データ・ローズ」は、彼の影響を感じる新曲です」
Photo by Yuka Yamaji
2017 6.7 wed., 6.8 thu., 6.9 fri.,
6.10 sat., 6.11 sun.
- MARIA SCHNEIDER(マリア・シュナイダー)
- 米ミネソタ州ウィンドム出身。ギル・エヴァンスやボブ・ブルックマイヤーに学ぶ。デヴィッド・ボウイの「Sue(Or In A Season Of Crime)」等、グラミー賞はこれまでジャズ、クラシック、ポップスのジャンルで5回受賞。
photography = Hiroyuki Matsukage interview & text = Kazunori Kodate interpretation = Keiko Yuyama