[インタビュー|OFFSTAGE]デヴィッド・サンボーン
2016年に始動した、新編成バンドで初来日
トロンボーンのワイクリフを中心に編成されたバンド。このメンバーで、リスペクトするマイケル・ブレッカーにオマージュを捧げたかったという。
使いこんだアルト・サックスをとても大切そうにテーブルに置いた。「渋滞がひどくて遅れてしまったね」。普段は、時間に正確だというデヴィッド・サンボーン。このやわらかな物腰と口調、真面目な清潔感が女性ファンから愛される理由だろう。愛用のサックスは、1960年代のものだという。
「愛用しているこの楽器の音の響き方、鳴り方が好きなんだ。他にいくつか所有しているけれど、1960年代のサックスとの相性が一番いいと思っている」
サンボーンは、新プロジェクトを率いて来日した。メンバーは、ベン・ウィリアムス(b)、ワイクリフ・ゴードン(tb)、ビリー・キルソン(ds)、アンディ・エズリン(p)。約2年前の出会いが結成のきっかけになった。
「ワイクリフと2年ほど前にジャズ・クルーズの船内で出会った。彼の力強いトロンボーンに、僕はすっかり魅せられた。ちょうどその頃、信頼するビリーと新しいバンドを始めよう、と話していたので、ワイクリフのトロンボーンを中心にバンドを結成したら、おもしろいことが出来るのではないか、と好奇心が沸いてきたんだ」
そんな新バンドのパフォーマンスは、彼が惚れたトロンボーンの存在感はもちろんのこと、5人の圧倒的な演奏力が魅力なのだが、なによりも彼ら自身が楽しんでいるのが熱いエネルギーとなって伝わってくるのがいい。
「そうなんだ、本当に楽しいんだよね。このバンドではお互いの演奏を聴きあうのが喜びになっている。いいエネルギーの交換が出来ている。それが何よりもの収穫なんだ」
ライヴは、新曲ではなく、マイケル・ブレッカーの遺作『聖地への旅』からの楽曲『タンブルウィード』と『ハーフ・ムーン・レーン』で始まった。意外な幕開けだった。
「バンドの結成時から、この編成で演奏する楽曲として、マイケル・ブレッカーの遺作が念頭にあった。その理由は、彼の遺作を聴いて、心から共感し、とりわけこの2曲が素晴らしいと思ったこと。それを西アフリカっぽいサウンドでやってみたい、という僕のアイディアにみんなも賛同してくれた。
もうひとつは、彼へのオマージュだ。マイケルと過ごした日々は、まるで音楽学校に通っているようだった。彼からたくさんの音楽の言語を学んだ。僕にとってマイケルは、最高峰のサックスプレイヤーであり、先生だった。その感謝の気持ちを捧げたいと思った」
オマージュは、ライヴだけではなく、レコーディングでも示す計画があり、「もしかしたら、アルバムをリリースすることになるかもしれない」と言う。
サンボーンは、毎年のようにブルーノート東京で公演を行っている。終演後の通路には握手を求める観客が殺到し、再び会場が熱気を帯びた。それがまたうれしいそうだ。
Photo by Yuka Yamaji
- DAVID SANBORN NEW QUINTET
featuring WYCLIFFE GORDON,
BEN WILLIAMS, ANDY EZRIN & BILLY KILSON - 2017 12.6 wed., 12.7 thu., 12.8 fri., 12.9 sat.
- David Sanborn(デヴィッド・サンボーン)
- 1960年代よりブルース/R&Bバンド等で活躍。1975年のソロ・デビュー以降、ジャズ/フュージョン界で人気を博す。エモーショナルなサウンドとプレイは圧倒的な影響力を誇り、その後のサックスという楽器の在り方さえも変えてしまったほど。
photography = Hiroyuki Matsukage interview & text = Noriko Hattori interpretation = Keiko Yuyama