[インタビュー|OFFSTAGE]ヴァネッサ・ウィリアムス
心の中の景色を歌で客席に伝えたい。
3月に5日間10公演行われたヴァネッサ・ウィリアムスのショーは美しくきらびやかなエンタテインメント。ジャズクラブがラスベガスのホテルのような空気になった。
ショウ本編のラスト、ヴァネッサ・ウィリアムスの1992年の全米ナンバーワンヒット「セイヴ・ザ・ベスト・フォー・ラスト」のイントロが響く。どっと歓声がわき、客席のテンションが一気に上がった。1ステージ、70分で18曲! 「ドリーミン」「ラヴ・イズ」など代表曲を惜しむことなく披露。美しくきらびやかで、ラスベガスのホテルショーのようだった。
「歌う曲は開演1時間くらい前に決めました。会場の雰囲気、オーディエンスの年齢層、音響の状態を考慮してね。ラストの「セイヴ・ザ・ベスト・フォー・ラスト」で一気に盛り上がったときには、とてもうれしかった。30年近く歌い続けているけれど、今では純然たる作品として存在していると思えます。あなたがほかの誰と一緒にいても、私の思いに気づかなくても、私はずっとここで待ち続ける、というラヴソング。たくさんのリスナーに愛され続けている、キャリアの中でも大切な作品です。きっと、多くの人がこの歌と同じ経験をしていると思う。今も世界中の結婚式で歌われています」
女優でもあるヴァネッサは、客席に手を伸ばし、胸に手を当て、感情をこめてバラードを歌い上げる。
「歌っているとき、私の心の中には美しい風景が広がっています。輝くお日様だったり、きらめく星だったり。その景色をメロディとともに皆さんに伝えたい。そう願うと、自然と体が反応してしまう。そんな気持ちになれるのは、腕利きのミュージシャンたちと上質な音響があってこそ。今のバンドは20年も一緒に世界をまわり心が通じ合っています。しかも、ジャズ、R&B、ブロードウェイミュージカル......なんでもできる腕利きたち。ブルーノート東京の音響スタッフも素晴らしい。私の声の音量を上げ過ぎず、抑え過ぎず。それぞれの楽器をきちんと鳴らした上でなお歌を引き立ててくれます」
ヴァネッサは今回が6度目の来日公演(ブルーノート東京では4度目)。変わらぬ声量、変わらぬ美しさの理由はどこにあるのだろう─。
「私の声や容姿が変わらないとすれば、エクササイズのおかげです。トレッドミルを使ってのランニングを毎日続けています。ピラティスやキックボクシングも。パーソナルトレーナーをつけてね。今日もホテルでしっかりと体を動かしました。体全体の筋肉を常にいい状態で維持することを心がければ、のども鳴ってくれます。ふだんは大きな声では話さず、ショウの前は十分にウォーミングアップをして、ステージだけで思い切り発声します」
彼女は今スタジオワークにも励んでいる。9年ぶりのアルバムを制作する中での来日公演だった。
「新作はジャズテイストです。トランペットはウィントン・マルサリス、ヴィブラフォンはジョー・ロックに参加してもらいました。私の好きな音楽家を集めて、私の好きな音楽をレコーディングしています。今は内容もリリースのペースも、レコード会社の指示に従わなくても、iTunesで音楽を発表できる。音楽を続けるにはいい時代になりました」
Photo by Yuka Yamaji
- VANESSA WILLIAMS
- 2018 3.5 mon. 〜 3.6 tue. 3.9 fri. 〜 3.11 sun.
- VANESSA WILLIAMS(ヴァネッサ・ウィリアムス)
- 1963年、ニューヨーク出身。"ミスアメリカ"という美貌と、シンガー、女優など多才。「セイヴ・ザ・ベスト・フォー・ラスト」が全米1位、映画『ポカホンタス』の「カラーズ・オブ・ザ・ウィンド」でグラミーを受賞。
photography = Hiroyuki Matsukage interview & text = Kazunori Kodate interpretation = Kazumi Someya