[インタビュー|OFFSTAGE]メイシオ・パーカー
レイ・チャールズはいつも真実を歌っていた。
メイシオ・パーカーの6月の来日公演は、サックス奏者、亡きレイ・チャールズへのオマージュだった。 レイの名曲で会場全体が大エンタテインメントになった。
「レイと同じデザインのサングラスをかけ、レイの曲を、レイのバンドのコンダクターのスティーヴとともにやる。僕は今、天国にいるような気分だよ」開演前の楽屋で、メイシオ・パーカーはまるで子どものような無邪気な笑顔で語った。
6月に4日間8公演行われたメイシオのショウは、レイ・チャールズへのオマージュ。「ホワッド・アイ・セイ」「愛さずにはいられない」「わが心のジョージア」など16曲を披露した。日本人で編成されたバンドをコンダクトするのは、レイの生前、ともに活動していたスティーヴ・シグムンド。バックコーラスだったレイレッツの3人も一緒に来日した。
「メイシオはレイの音楽を的確にとらえているね」傍らでスティーヴがメイシオに同意する。
「心が動かない歌は歌えない。レイはいつも言っていた。自分が納得できなければ絶対に歌わないのが、信条だった。だからこそ説得力があった」
レイの死後、メイシオとスティーヴは再会する。
「メイシオのワイフから連絡をもらったんだ。レイのオマージュのツアーをやろう、とね。うれしかったよ。レイがいなくなり、バンドはばらばらになってしまった。それぞれが新しい仕事を探さなくてはいけない時期だったんだ。ブルーノート東京では日本人の素晴らしいミュージシャンたちの力を借りているけれど、アメリカではレイが生きていたときのバンドそのままでツアーをしている」
メイシオのショウは毎回大エンタテインメントだ。客席ではみな立ち上がり、踊り、歌う。
「かつて僕は自分の音楽について"98%ファンク、2%ジャズ"と言っていた。僕にとってのジャズは、オーディエンスがじっくり聴く音楽。一方ファンクは、オーディエンスも参加する音楽。そういった意味で、僕のショーは客席に参加してもらう要素が大きい。今回のブルーノート東京でも、ステージと客席の役割が逆転したと感じていたよ。つまり、ステージにいる僕が客席で歌い踊る人たちを見て感動していた。まさしく理想と思っているショウだった。こういう客席の風景を見ることができるからこそ、ずっと音楽を続けていくこともできるんだ。そして、それは、レイ・チャールズにも共通することだと思う。彼が肩を揺らしながら歌うと、会場全体がエンタテインメントになっていた」
Photo by Tsuneo Koga
- Blue Note Tokyo 30th Anniversary presents
- "THIS IS RAY CHARLES" starring
- MACEO PARKER & HIS BIG BAND featuring
- THE RAELETTES & STEVE SIGMUND
- conducting 2018 6.7 - 6.10
- MACEO PARKER(メイシオ・パーカー)
- 1943年、米ノースカロライナ生まれ。'64年にジェームス・ブラウンのバンド、'75年にはジョージ・クリントンが主宰する"Pファンク"でブーツィー・コリンズらと活躍。他共演にプリンスやデヴィッド・サンボーン、キャンディ・ダルファーも。
photography = Hiroyuki Matsukage interview & text = Kazunori Kodate interpretation = Kazumi Someya