[インタビュー|OFFSTAGE]クリスチャン・マクブライド
チックやロイの音楽を次世代に伝えるのが役割。
チック・コリアのトリオで来日公演を行ったベーシスト、クリスチャン・マクブライドが今強く思っている使命とは?上の世代のレジェンドたちやロイ・ハーグローヴへの思いとは?
4月のチック・コリア・トリロジー featuring クリスチャン・マクブライド and ブライアン・ブレイドのショーは5日間10公演すべて満席になった。
「チックは年齢を重ねても演奏力も発信力もまったく衰えていない。クリエイティヴであり続けている。その理由の1つは常にツアーを続けていることだと思うよ。毎日演奏するからこそ音は研ぎ澄まされていく。北米だけではなく、ヨーロッパ、南米、アジア、各国の音楽を取り入れているんだ」
ベーシストのクリスチャン・マクブライドはトリオのリーダー、チックへのリスペクトを語る。 「僕は上の世代のレジェンドたちから学んだ。チック、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーターからは特に多くを得た。この3人に共通することは、常に心をオープンにしていることだと思う。音楽はもちろん、文化や宗教などからもあらゆることを吸収して、音楽に生かしている」
なぜクリスチャンは世代の違う経験豊富なレジェンドたちに愛されているのだろう─。
「10代のころ、彼らの音楽を徹底的に研究したからじゃないかな。何度も何度もレコードを聴き、ベースのパートだけでなく、すべての楽器のメロディやコード進行を研究しつくした。これで十分、と思ったところから、さらに一歩も二歩も先まで知ろうとした。彼らと会ったときに、僕はすでに十分な準備ができていたんだ」
レジェンドたちから学んだ音楽を今、次世代に伝えていかなくてはいけないと考えている。 「40代、50代のミュージシャンは、チック、ハービー、ウェイン、僕の場合はさらにフレディ・ハバードやマッコイ・タイナーからもらったものを、20代、30代につなぐ役割を担っているんだ」
それを思うと、クリスチャンと同世代で同じ役割を担うロイ・ハーグローヴの他界は、ジャズシーン、音楽シーンにとって、あまりにも大きな損失だった。
「ロイは若くしてレジェンドだった。僕がロイと一緒に日本に来たのは、たぶん1度だと思う。1991年に東京ドームで開催されたプレイボーイ JAZZ フェスティバル・イン・ジャパンだよ。ラリー・カールトン、ナンシー・ウィルソン、ジョージ・デュークたちが参加した。ロイと僕は、ジャズ・フィーチャーズというグループで演奏した。彼の魅力は、恐れを知らないことだと思う。常に果敢にチャレンジした。スウィングだろうと、ロックだろうと、ファンクだろうと、誰との共演でも、臆することがなかった。しかも、ロイには超えられない山はなかった。なぜだと思う? それは彼が誠実だからだよ。常に自分の持つすべてで心を込めて演奏していた」
ロイとの共演で得た音楽もクリスチャンは次世代につないでいかなくてはいけない。
「僕はジャズの演奏にソウルやR&Bの要素を盛り込む。ロイも同じだった。チャレンジする性格だからね。それはやはり常にツアーを行い、さまざまな国の音楽を吸収しているからだと思うよ」
Photo by Yuka Yamaji
- CHICK COREA TRILOGY featuring
CHRISTIAN McBRIDE and BRIAN BLADE - 2019 4.4 - 4.8
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CHRISTIAN McBRIDE
(クリスチャン・マクブライド) - 1972年、ペンシルヴァニア州フィラデルフィア生まれ。プロ活動開始後、わずか数年間で100枚近いジャズ・アルバムの録音に参加。アコースティック・ベースで天才的なセンスを示す。94年、ヴァーヴに初リーダー作を録音。
photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Kazunori Kodate
interpretation = Kazumi Someya