[インタビュー|OFFSTAGE]サイモン・バーソロミュー & アンドリュー・レヴィ
客席が第一。だから代表曲を中心に演奏する。
新ヴォーカリストのアンジェラ・リッチを迎えて来日したザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズのサイモンとアンドリューがライヴで大切にしていることとは。
新しいヴォーカリスト、アンジェラ・リッチを連れて来日したザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ。彼女をオリジナルメンバーのサイモン・バーソロミューとアンドリュー・レヴィはどう評価しているのか。
「実は日本に来るまでに彼女とは10本くらいしかライヴをやっていないんだ。だから1回1回音楽的に進化をしているところだよ。彼女には明らかに僕たちよりも優れていることがある。それはステージ演出だ。彼女はモデルや女優の経験があるので、自分の見せ方、見られ方を熟知している。その魅力は十分に発揮してくれていると思うよ」(サイモン)
「ブラン・ニュー・ヘヴィーズの曲を1人のヴォーカリストが歌うのはとても難しい。歴代ヴォーカリストの曲も歌わなくてはいけないからね。さらに、7人が演奏する大音量に負けない声を持っていなくてはいけない。その点、アンジェラは過去の曲をきちんと理解して、自分の中で消化して、パフォーマンスできていると思う」(アンドリュー)
実際に3日間6公演は大変な盛り上がりだった。サイモンのフェンダー・ストラトキャスターも、アンドリューのフェンダー・ジャズベースも、楽器そのものの音が鳴っていて気持ちがよかった。
「正統派ブランドの正統派の楽器の演奏は難しい。シンプルな音だからね。でも、キャリアを積んでやっと鳴らせるようになってきた。実は僕のギターには不具合があったんだけど、ブルーノート東京の音響スタッフが直してくれた。驚いたよ」(サイモン)
セットリストは「Never Stop」「Back To Love」「Stay This Way」など代表曲をずらり。最新アルバム『TBNH』からは「These Walls」を演奏した。
「バンドメンバーからはレアな曲もやりたいという希望もあった。でも、みんなが知っている曲を並べたんだ。新曲は1曲だけ入れた。そのほうが客席は盛り上がってくれるからね」(アンドリュー)
「客席が喜んでくれることが一番。音楽で盛り上がってくれれば僕たちは満足できる」(サイモン)
その考えには彼らのキャリアが関係している。
「僕たちはアートカレッジの同級生なんだ。10代からの付き合いでね。学校内のコンペティションでの優勝がきっかけで、そのまま音楽を続けてデビューした。僕はフランク・ザッパやジミ・ヘンドリックスやレッド・ツェッペリンが大好きだった。アンドリューはジャズが好きでね。サダオ・ワタナベを聴いていた。10代でサダオ・ワタナベを聴いているイギリス人なんてめったにいないよね」(サイモン)
「つまり、僕たちは音楽大学で正統的な教育を受けたわけじゃないんだ。楽器のトレーニングも受けていない。技術的にはまったく自信がないところからスタートした。音楽が好きなだけだった。でも、バンドを組むと、なんとかマシな音になったんだ。まわりがほめてくれて、好きにさせてくれたから、すくすく育ってデビューして、50代になってもこうして音楽ができている。幸せだよ。だからこそ、聴いてくれる人を大切にしたい」(アンドリュー)
Photo by Great The Kabukicho
- THE BRAND NEW HEAVIES
- 2019 8.10 - 8.12
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THE BRAND NEW HEAVIES
(ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ) - 1985年にヤン・キンケード、アンドリュー・レヴィ、サイモン・バーソロミューによって結成。2016年以降、レヴィとバーソロミューを軸として活動。「ドリーム・カム・トゥルー」「ネヴァー・ストップ」等のヒット以降、アシッド・ジャズ・シーンを牽引してきた。
photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Kazunori Kodate
interpretation = Kazumi Someya