[インタビュー|OFFSTAGE]ラリー・カールトン
毎回スペシャルな音楽を提供していきたい。
8月から9月のリチャード・ボナを迎えてのショウで5日間10公演を満席にしたギタリスト、ラリー・カールトン。積極的に共演する理由と今のギターの音について話してくれた。
ラリー・カールトンは、リチャード・ボナとは今回のジャパンツアーが初対面だったそうだ
「リチャードが素晴らしいベーシストでシンガーであることは知っていたし、音楽も聴いてはいたよ。でも、会うのは初めてだった。リハーサルで実際に音を聴くと、彼はプロの領域をはるかに超えていた。僕が想像していた以上に彼は芸術家だったよ」
会ったことのないアーティストとの共演をなぜラリーは躊躇なく受け入れたのだろう。
「僕はいつもオーディエンスにスペシャルな何かを提供したい。来日ごとに新鮮な音楽を届けたい。ショウをルーティーン化させたくないんだ。そんな僕がリチャードとの共演を提案された。絶対にいいショウになることがイメージできた」
共演に対して常に前向きな気持ちになったのは、1998年に行ったTOTOのギタリスト、スティーヴ・ルカサーと演奏したことがきっかけだという。
「ルークとは名古屋公演のサウンドチェックで、初めて一緒に音を出した。それまではメールで打ち合わせしただけ。ところが、自分たちもびっくりするほどの相性だった。あまりにも楽しかったから、記念にと、次の大阪公演を録音したんだ。それがアルバム『ノー・サブスティテューションズ』になり、2001年のグラミー賞最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバムを受賞した。あれ以降、僕はさまざまなミュージシャンとやるようになったんだ」
ルカサーとはなぜうまくいったのだろう。
「ルークが僕の過去の演奏を聴き、理解していてくれたからだよ。その後僕はロベン・フォードとも共演した。とても満足できる音になった。あのときは後輩である僕が彼の大ファンで、しっかり音を聴いていたことがよかったのかもしれない。Tak Matsumoto(B'zの松本孝弘)とのときは、自分たちの意思ではなく、ギブソンからの提案だった。そして、グラミー賞最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバムをもらった。そういう体験があったからこそ、今回のリチャードとの共演もわくわくしたよ」
ラリーの演奏は年齢を重ねるごとに、ますますブルージーになっているように感じる。
「ミュージシャンのキャリアには"音楽の季節"があるんだ。1970〜1980年代は、僕にとってフュージョンの季節だった。当時のL.A.ではああいう音が好まれたわけだけど、僕には自覚はなくて、好きな音楽をただ一所懸命演奏していたら、あのスタイルになったんだ。そして1990年代からは徐々にブルースの季節に変わっていった。今の僕のギターはすっかりブルージーで、フュージョンを演奏する技術は失われてしまったとすら感じているよ」
ラリーはそう言うが、ショウのアンコールで1970年代の名曲「ルーム335」を演奏したときは客席にアメリカ西海岸の風が吹いたように感じられた。
「それは聴く側のマインドのおかげだよ。今の僕の『ルーム335』はブルースのアプローチ。でも、聴く人の気持ち次第でL.A.の香りにもなるんだね」
Photo by Makoto Ebi
- LARRY CARLTON with special guest RICHARD BONA
- 2019 8.29 - 9.2
-
LARRY CARLTON
(ラリー・カールトン) - 1948年、カリフォルニア州生まれ。1977年に発表した傑作『夜の彷徨』で人気を不動のものに。'88年に強盗の銃撃で瀕死の重傷を負うも奇跡の復帰。2010年には松本孝弘との共演作品でも話題をまいた。
photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Kazunori Kodate
interpretation = Kazumi Someya