自宅も公開! サンボーンにインタビュー
現代最高峰のアルト・サックス奏者が
精鋭揃いのNEWバンドで登場
ニューオリンズとセントルイスを結ぶルーツ・ミュージックのエッセンス。
異色の組み合わせとも言える新メンバー。アルトとトロンボーンによるフロント・ラインの躍動とバラエティ豊かな選曲。美しい緑に包まれ、雄大な川の景色を眺める自宅にて、サンボーンが自然と音楽を語る。
photography = Saya Hishikawa
interview & text = Sam Kawa
豊かな自然、自宅敷地内に植えられた日本情緒たっぷりの松や竹。そして広大なハドソン川を一望できるリビング・ルームと自宅スタジオ。3年ほど前に引っ越したという新居の環境がサンボーンに与えた影響はとてつもなく大きいようだ。
「一日の始まりから夜が更けるまで、弧を描く川の流れを毎日眺めることができる。それはどんな映画よりも素晴らしい。そして鳥たちがやって来てさえずる。まるで、全ての自然のリズムというものを再確認するような感じなんだ。月並みな言い方かもしれないけど、大地のリズムに再び触れることができたのさ」
サンボーンはミシシッピー川の畔にある中西部の大都市セントルイスの出身。ニューオリンズを起点にミシシッピー川を北上し、メンフィスを経由して伝承・発展していったアメリカのルーツ音楽の一つの"到達地"である。
「僕にとって川というのは大きな意味を持っているし、セントルイスで育ったことは僕の音楽人生にとても大きな影響を与えている。ミシシッピー川はセントルイスに様々な音楽を届けてくれたんだ。それはブルージーで土臭いアメリカ音楽の基盤や基本的な資質と言えるもので、僕はそういう中で育ったんだよ」
そんなサンボーンの新バンドは、ルーツに立ち返りながら、"川"がもたらす生命と音楽の躍動にも満ち溢れた新境地を聴かせてくれる。しかもトロンボーンとの2管がフロント・ラインの5人編成という、彼にとっては新たな試みと言える。
「確かにアルトとトロンボーンのバンドというのは、あまり多くないかもしれないね。今回は僕のサウンドもこれまでとはちょっと違うし、少しテナーっぽいとも思うよ。それはトーンのクオリティやサウンド的な意味でね」
異色のコンビとなるトロンボーンのワイクリフ・ゴードンは、新バンドの大きな目玉だ。
「ワイクリフは正に自然児さ。荒削りで賑やかなニューオリンズ・スタイルと彼のポジティヴなアプローチは極めてユニークだ。ベースのベン・ウィオリアムスはアコースティックをプレイするし、これまでとはちょっと異なる感覚だと思うし、絶対に面白いものになるはずさ!」
ニューオリンズとゴスペルの深い絆を聴かせるゴードンと、セントルイスとブルースをルーツに持つサンボーンとの"ミシシッピー川コネクション"は一つの必然と言えるのかもしれない。
和風の佇まいを見せるニューヨーク郊外の自宅外観と日本人庭師の手による松の木。自宅内は2階のリビング・スペースと1階のスタジオ部分とに別れ、スタジオ内ではリハーサルやレコーディングの他、サンボーンのインターネット・ショーも配信される。その栄光を物語る記念品の数々の合間に小さな仏像などがさりげなく並び、愛猫のテルマとルイーズが主人を見守る。
おだやかで終始にこやかに話すサンボーン。これまでにリリースしたたくさんのアルバムジャケットや写真を見せてくれた。手前の写真は若かりし頃のご本人で、当時の髪型の話で盛り上がった。
スタジオにあるピアノとブース。それぞれに大きな窓があって開放感がある。自慢の松の木もよく見える。
左)サンボーンが受賞したグラミー賞の貴重なトロフィー。1982年の「All I Need Is You」に始まり、ボブ・ジェームスとの『Double Vision 』やヒット曲「Straight To The Heart」など6回受賞している。
右)サンボーンが、自宅のスタジオで夏にセッションしたメンバーたちを書いた黒板。ベン・ウィリアムスやアンディ・エズリンなど、12月6日から始まるブルーノート東京公演に出演するメンバーの名前も見られる。
デヴィッド・サンボーン
『タイム・アンド・ザ・リヴァー』
(ビクターエンタテインメント)
- Sam Kawa(サム・カワ)
- ゴスペル教会音楽監督&チャーチ・ミュージシャン。
> 長年、音楽演奏/制作/執筆活動、音楽教則ソフトのプロデュース、音楽アーティストのマネージメントに携わった後、10年程前よりハーレム、ブロンクスのゴスペル教会にて音楽を通した伝道活動に従事。