ロイ・ハーグローヴのトランペット
一流のチョイス
ジャズに対してとことんエゴイスティックでありながらストイック。
N.Y.の最先端ジャズシーンを駆け抜けるロイ・ハーグローヴが
選ぶ史上初のカーボン製トランペット『da carbo (ダ・カーボ)』
まだ東京に多くの雪が残る今年の2月中旬、N.Y.を代表する精鋭たちによるビックバンドを従えてブルーノート東京にやってきたロイ・ハーグローヴ。90年にデビューして以来、自己のクインテットでジャズの神髄を追求する傍ら、一方でR&BやHip Hopの要素を織り交ぜたバンドを展開。常にニューヨークジャズの最先端を野心的に走り続けている彼が今回の東京公演のパートナーとして選んだのは、史上初となるカーボンを用いたトランペットda carbo (ダ・カーボ)だ。
スイスに小さなハンドメイド管楽器工房をかまえるスピリ社が満を持して世に送り出したda carboは、ベル部分にF1マシンにも使用される超軽量ドライカーボンを使用。熟練のトランペット製作職人の手作業によって、驚く反応がよく安定しながらもジャズ特有のダークなサウンドが出せるように仕上がっている。実際のロイの演奏も、大音量のビックバンドを従えているにもかかわらず、音数少なくメロディーを吹くだけでそのダークかつシャープで豊かな音色を堪能することができた。
フリューゲルホーンは、こちらもスイス製の『インダービネン・ウッド』。オールハンドメイドの美しいフォルムとダークだがハートウォーミングな音色が特徴だ。「音楽に必要なのはリズムと美しいメロディー、そして豊かなハーモニーなんだ。楽器はホントはなんだっていいんだよ」といたずらっぽく語る彼は、エゴイスティックでストイックで、そしてとてもチャーミングに見えた。
「日本のファンはとてもよく音楽を知っているから、深く尊敬している。メロディーの美しさ、ハーモニーの良さに対していつも感情豊かに感じ取ってくれることに、僕はいつもとても感謝しているんだ」。彼は日本のファンに向けて、最後に真摯な眼差しでそう語ってくれた。
(写真下)ベル部分にはカーボン特有の模様が入っている。シグネイチャーは「Toni Maier」。
右/トランペットマウスピースはカンスタル。こちらは27歳の誕生日にクラウディオ・ロディッティからもらったもので、それ以来ずっと使い続けているそうだ。マイルス・デイビスも愛用していたモデルの一つ。
photography = Keisuke Akabane interview & text = Satoshi Okoshi
- ロイ・ハーグローヴ
- Roy Hargrove(ロイ・ハーグローヴ)
学生時代にウィントン・マルサリスに師事。名盤『ハバナ』はグラミー賞を獲得する。R&B/ヒップ・ホップの要素を導入した"RHファクター"も人気を博し、ジャズとストリート・ミュージックを両輪に活躍する。
[公演データ]ロイ・ハーグローヴ・ビッグ・バンド 2014 2.16 sun. - 2.19 wed. - 大越 聡(おおこし・さとし)
- 1971年生まれ。学生時代は中央大学Swing Crystal Orch.,明治大学Big Sounds Society Orch.などで演奏。「サックス&ブラスマガジン」(リットーミュージック刊)等で執筆中。