二つの極を内に宿す男、パキート・デリベラがステージで見せる魔法 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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二つの極を内に宿す男、パキート・デリベラがステージで見せる魔法

二つの極を内に宿す男、パキート・デリベラがステージで見せる魔法

ジャズとクラシック、二つの極をつなぐ"匠"の魔法

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 "静"と"動"とか、"芸術性"と"娯楽性"とか。音楽家はおうおうにして、二つの極を内に宿す。もちろん、一極だけを見据え、それに邁進する担い手もいる。それはそれでインパクトの強い音楽を生み出し、カリスマ性を得やすい。だが、物事の両面を抱えることで、音楽に宿る深みや陰影などが獲得しやすくなるのは疑いがない。

 そして、パキート・デリベラというサックス/クラリネット奏者は相反する軸を抱えることで、唯一無二の魅力を放ってきた演奏家である。1948年にハバナで生まれた彼(70才になったばかり)は、子供のころからジャズとクラシックに親しみ、10才にして国立劇場オーケストラと共演。ローティーンにしてハバナ音楽院に学び、17才にはキューバ国立交響楽団のソロイストに抜擢もされた。

 そんな早熟だった彼のインターナショナルなキャリアの第一歩は、ピアニストのチューチョ・バルデスらとラテン・フュージョン・バンドのイラケレを結成したこと。1979年に世界デビューし大絶賛を受け(グラミーも受賞した)、1981年にデリベラはさらなる音楽の自由を求め亡命し、NYを拠点に活動して行くこととなる。その後、彼はキューバ育ちの血が生きた躍動的なジャズ・マンとしての姿をアピールするともに、事あるごとにクラシックに精通する熟達した音楽家としての顔も出してきている。

 東京文化会館での2013年公演は小曽根真と東京都交響楽団とのクラシック傾向にある共演であり、2014年にブルーノート東京で持たれたショウはブラジル人たちのトリオ・コヘンチとのもの。近年の来日公演を見ても、いかに彼が広範かつしなやかに音楽に向かい合っているかが分かるだろう。

 さて、かようなデリベラの最新公演は、在NYのジャズとクラシックの両方に精通した辣腕奏者たちを擁した出し物となる。その同行者の多くは、彼がジャズ編成でショパンやモーツァルト曲に臨んだ2014年作『Jazz Meets the Classics』の参加者たち。当然、今ライヴは同作に負った実演になるという。アルゼンチン人トランペット/トロンボーン奏者やペルー人コントラバス奏者も含むクインテットによる演奏は、単なるジャズとクラシックの出会いに終わらぬペーソスや色彩感を持ち、複数の属性を持つからこそのえもいわれぬ綾の重なりの感覚を浮き上がらせるだろう。

 それから、もう一つ。そんな含蓄深い表現をやるにも関わらず、デリベラの所作は毎度とてもお茶目。〈深遠な音楽性〉と〈親しみやすい人生謳歌の感覚〉の両立。それもまた、複数の属性をつなぐパキート・デリベラの素敵に他ならない。

 

Paquito D'Rivera
『Jazz Meets the Classics』
(Sunnyside / King International)

佐藤英輔(さとう・えいすけ)
ロックやファンクからジャズまで、変てこだったり、狭間にあるものを好む物書き。快楽的なものと、ライヴ好き。それに主に触れたブログは、http://43142.diarynote.jp

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