須永的解釈! 『カメレオン』40年振りリメイク
トレンドに左右されること無く
名曲として君臨し続ける「カメレオン」
いち早く電化楽器を手にしたピアニストにして、モダンジャズ期からファンク~フュージョン期に渡り第一線で活躍、83年に発表した「フューチャー・ショック」に収録されたロック•イットではダンスフロアにも接近した。記憶に新しいところでは2010年に発表したイマジン・プロジェクト等々常に音楽界に話題を提供し続けるジャズ・ジャイアント、ハービー・ハンコックのエレクトリック・ジャズ期を代表する作品が「ヘッド・ハンターズ」である。そのアルバムに収録され大ヒットした曲が『カメレオン』であり、それは今回来日を果たすドラマー、ハーヴィー・メイソンとの共作である。西のスティーヴ・ガッド、東のハーヴィー・メイソンと謳われた、その当代きっての名ドラマーがニューアルバム「カメレオン」を引っさげ待望の来日を果たす。
「ヘッド・ハンターズ」についての情報を少々。73年にリリースされたそのアルバムはビルボードのジャズ・チャートでNo.1を獲得し商業的に大成功を収めたアルバムなのは言わずもがな、以降ディスコ時代を含めクラブミュージックの文脈にも繫がるダンス・ミュージックの基底とも伝えられている。またレア・グルーヴという定義がなされた80年代後半にいち早く再評価されたアルバムでもあり、私達DJにとっても金字塔的作品の一枚でもある。共作者のハーヴィー・メイソンがその『カメレオン』を40年振りにリメイクしたというのだ。
ここで件のレア・グルーヴ•ムーヴメントについて補足を加えたい。レア・グルーヴなるムーブメントはロンドンのダンスフロアから火が付いた。主にアメリカの60's~70'sに録音されたものの、当時はさほど評価されずに埋もれていた音源を、DJがフロアを通して聴くという新しい価値を加え、再評価され浮上した音源の数々の総称であり現象である。ソウルやファンクを中心に、当時(87年頃)は全く見向きもされなかったB級な音源を、新たな価値を加え聴く角度やダンスに特化することによって新しい命を吹き込まれた音源でもある。ただ誤解して欲しくない部分は、それらが全てB級かというと否であり、実際ジェームス•ブラウンやその一派、そしてこの「ヘッド・ハンターズ」のように商業的に大成功したものも含め、その再評価によってあらためてクローズアップされた点でもあるということ。つまり、一環して音楽にはトレンドがあり、その時々で徒花のようなヒット曲がチャートを賑わせては消えることも常ながら、一方でそういったトレンドとは別のベクトルで、どんな角度で聴かれても名曲として君臨し続ける作品もその時々で確実に生まれているのである。
そういった再生の経緯を踏まえると、今回来日となる件のハーヴィー・メイソンの慧眼に適ったスーパー・プレイヤー達の共演もいつの時代かまた近しい未来に評価される時が来るだろう。そのシーンの目撃者となる良い機会を頂いたようで、ただただ嬉しく思う。
- 須永辰緒 (Sunaga t Experience)
- Sunaga t experience =須永辰緒によるソロ・ユニット含むDJ/プロデューサー。 DJとして東京、大阪でレギュラー・パーティーを主宰 。DJプレイでは国内47都道府県を全て踏破。欧州からアジアまで海外公演も多数。MIX CDシリーズ『World Standard』は10作を数え、ライフ・ワークとも言うべきジャズ・コンピレーションアルバム 『須永辰緒の夜ジャズ』は15作以上を継続中。国内から海外レーベルのコンパイルCDも多数制作。多数のリミックスワークに加え自身のソロ・ユニット"Sunaga t experience"としてアルバム4作を発表。多種コンピレーションの 監修やプロデュース・ワークス、海外リミックス作品含め関連する作品は延べ200作を超えた。日本一忙しい"レコード番長"の動向を各業界が注目している。
ハーヴィー・メイソンが
名曲を40年ぶりにリメイク!
ハービー・ハンコックのエレクトリック・ジャズ期を代表する名盤『ヘッド・ハンターズ』('73年)で大きな存在感を示したドラマー、ハーヴィー・メイソンが、収録曲にして大ヒット曲「カメレオン」をリメイク。参加アーティストは世代を超え凄腕たちが出揃った。
ハーヴィー・メイソン
『カメレオン』
COCB-54084/¥2,500+税/日本コロムビア