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Journey back Home「こころの旅」2015

artist Journey back Home , 亀田誠治

REPORT

Journey back Home「こころの旅」2015 ライブレポート 2015.07.13

7月13日(月)に「ブルーノート東京」で開催されたチャリティライブ、『Journey back Home「こころの旅」2015』。東日本大震災後に有志が集まり、「音楽や言葉の力で何かを届けられないだろうか」。そんな想いで2011年に最初のステージが行われた。

3回目となった今回のライブでは、プロジェクトの中心でもあるレイチェル・チャンの詩の朗読、ATSUSHI(Dragon Ash)がダンス、さらにベースに亀田誠治を迎え、Salyu(ヴォーカル)、伊澤一葉(ピアノ)、四家卯大(チェロ)、柴田雅人(津軽三味線)のジャンルを超えた豪華アーティストたちが顔をそろえた。ジャズの聖地「ブルーノート東京」では、異色とも言えるライブかもしれない。

やわらかく切ないチェロの響きで幕をあけ"こころの旅"が始まる。そしてレイチェル・チャンが、ライブのテーマのひとつでもある谷川俊太郎の「生きる」を朗読する。

いのち、愛すること、かけがえのない日常......。人間の根源的な感情を紡いできた谷川俊太郎の詩の世界を軸に、ひとりひとりにとっての大切な存在に想いを馳せたり、未来への夢や希望をイメージしたりを共有する時間にしたいという想いがあった。

詩を1編読み終えたところで、ステージ上に残りのメンバーがひとりひとり上がり、Salyuのアカペラによる「アメイジング・グレイス」が歌われる。清らかで伸びのあるSalyuの声に呼応するかのように、ステージ中央でATSUSHIが舞う。すらりとした四肢を伸ばし、身体全体で表現していくその姿は、神に祈りを捧げるようでもあるし、羽ばたく鳥のようでもあった。

インプロビゼーション(即興演奏)では、ウッドベースに、チェロ、時折、三味線の音が加わり、弦楽器と鍵盤、さらに電子音とSalyuの声が重なり、入り混じる音の世界に、ここではないどこかにいるような気持ちにさせてくれる。

そして、谷川の詩から「やわらかいいのち」の朗読につづき、伊澤のオリジナル曲「sasori」へと流れていく。

「星の組曲」の朗読では、レイチェル・チャンとSalyuの掛け合い形式で進められ、やさしく温かなふたりの声が、広い宇宙へとイマジネーションをどんどんふくらませていく。詩を読み終え、そのまま「to U」へ。ピアノの伴奏に乗せて「がんばらなくていいよ」と歌うSalyuの声が、そして歌詞が、まるで言葉がこぼれ落ちてくるかのように心にしみわたった。

ライブ終盤には、このライブのために亀田が書き下ろした「Journey Back Home」がオールスターで演奏された。実はここまで一切MCはなく、まるで芝居の舞台を見ているようなステージが繰り広げられたのだ。

メンバー紹介を終え、震災以降、レイチェル・チャンが支援している酒蔵のひとつ、津波で甚大な被害を受けた岩手県大槌町の「赤武酒造」からのメッセージが紹介される。

そしてラストは、宮城出身の柴田による「えにしよ ひろがれ」の津軽三味線と歌唱。「今、ここにいる人が東北のことを想ってくれるだけでもうれしい。こうして、えにし(縁)が広がっていってくれたら」というメンバー全員の想いが込められた。

アンコールは、「音楽と言葉で遊んでみましょう」との亀田の提案で、ジャズ&ロックなベースサウンドに乗せて、レイチェル・チャンが谷川の詩「生きる」をワンフレーズずつ読み上げながらメンバーひとりひとりが、その詩を音で表現するという企画が披露された。「それはミニスカート」、「それはアルプス」、「それはピカソ」......。声で、ピアノで、ベースで、三味線で、チェロで、そして踊りで、思うままに表現していく。まるで楽器が詩を読むように。観客も手拍子をしながら、笑いながら、会場が一体となり盛り上がる。

そして、締めくくりは、谷川俊太郎が作詞を手がけた「鉄腕アトム」をSalyuの軽やかなヴォーカルをリードに、観客も一緒に歌いハッピーな空気に包まれて幕を閉じた。未来を担う子どもたちのためにも、震災を風化させないためにも、今後もつづけていけたらと、レイチェル・チャンはじめメンバーが口をそろえて話していたのも印象的だった。詩と歌と音楽と舞。温かく幸福な時間。改めて音楽の力を感じるひととときだった。ライブを通して、自分にとって大切な何か、かけがえのない存在、こころのふるさとを感じる一夜になったことだろう。

(文:川崎圭子)

SET LIST

2015 7.13 MON.
1st & 2nd
1. 「生きる」
2. Amazing grace
3. SESSION1「Improvisation」
4. 「やわらかいいのち」
5. sasori
6. 「星の組曲」
7. to U
8. 「ありがとう」
9. Journey back Home
10. えにしよ ひろがれ
EC1. SESSION2「生きる」
EC2. 「平和」
EC3. 「鉄腕アトム」

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