LIVE REPORTS

ARTIST ARCHIVES

MONTHLY ARCHIVE

VIDEO ARCHIVES


Blue Note Tokyo 30th Anniversary presents JACOB COLLIER with BLUE NOTE TOKYO SYMPHONIC JAZZ ORCHESTRA @SUMIDA TRIPHONY HALL

artist ERIC MIYASHIRO , JACOB COLLIER

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


全オーディエンスの目を点にした初来日公演から、早くも2年半。英国が生んだ驚異のマルチ・ミュージシャン、ジェイコブ・コリア―の人気はすっかり定着したといっていいでしょう。約1800席を有する「すみだトリフォニーホール」は3階までファンでいっぱい、年齢層も幅広いです。通常はソロでパフォーマンスするジェイコブですが、今回は総勢61名からなる"ブルーノート東京シンフォニック・ジャズ・オーケストラ"(ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラを軸に、クラシック畑の奏者を加えた特別編成)とのコラボレーション。"ひとりオーケストラ"の異名をとる彼と実際のオーケストラが、ブルーノート東京の30周年を記念するスペシャルなステージで、本邦初共演を果たしたのです。

広いステージの向かって左側にはストリング・セクション、中央奥にはホーン・セクションと打楽器群、右側にはリズム・セクションが配置され、ジェイコブが演奏するピアノ、キーボード、ギター、ベース、ドラムス、パーカッションはその前に置かれます。"こんなセッティングのライヴは見たことがない"と驚いていると、メンバーが次々と登場してきました。最後に現れたのは、もちろんジェイコブ。足取りも軽やかにステージにあがると、場内から万雷の拍手が起こります。

オープニングは、スナーキー・パピーのアルバム『Family Dinner - Volume 2』で歌っていた「Don't You Know」。ヘッドセット・マイクをつけて、おなじみの"ひとりコーラス" (声をハーモニー化する)を繰り広げながら、各楽器の間をめまぐるしく飛び回り、実によくコントロールされたタッチでそれらを次々と演奏していきます。曲中でステージを降りたと思ったら、客席通路を歩きながら歌唱しはじめたのにも驚かされました。これ1曲で彼は、すっかりオーディエンスの心をつかんでしまったといっていいでしょう。スティーヴィー・ワンダーの「I Wish」では村田陽一のトロンボーン、小池修のテナー・サックス、本田雅人のアルト・サックス・ソロ、当コンサートのコンダクターを務めたエリック・ミヤシロのトランペット・ソロもフィーチャー。"1秒たりとも静止していないではないか"と思えるほどの激しい躍動感を持つジェイコブの動きにインスパイアされたかのような熱いプレイが続きました。

いっぽう、メロウな一面が発揮されたのは2016年のアルバム『In My Room』収録の「Hideaway」、マイケル・ジャクソンの「Human Nature」といったナンバー。落ち着いた歌声にハープやヴァイオリンの優美な響きが重なり、それがホール特有の音響効果を得て、ふんわりと広がっていきます(今回の公演には母親のヴァイオリン奏者、スーザン・コリアーも参加していました)。乗せる曲ではあくまでも激しく、抒情的なナンバーではとことん手数を抑えて優しく。このコントラストもまた、ジェイコブの大きな魅力です。

クインシー・ジョーンズ、ハービー・ハンコック、パット・メセニーなど数々の重鎮に賞賛され、この7月には母国のロイヤル・アルバート・ホールでも公演を開催したジェイコブ。才気煥発のエンターテイナー、その勢いはとどまるところを知りません。
(原田 2018 10.9)


Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2018 10.8 MON.
1. DON’T YOU KNOW
2. HIDEAWAY
3. HAJANGA
4. I WISH
5. ONCE YOU
6. HUMAN NATURE
7. EVERY LITTLE THING SHE DOES IS MAGIC
8. WILD MOUNTAIN THYME
9. ALL NIGHT LONG
EC. BLACKBIRD

INDEX