2019 9.3 tue., 9.4 wed.
CHARLES LLOYD "Kindred Spirits"
artist CHARLES LLOYD
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
御年81歳。生涯何度目かのピークを確実に迎えている巨星チャールズ・ロイドが、新プロジェクト"Kindred Spirits"(気の合う仲間たち)で来日中です。共演メンバーはジュリアン・ラージ(ギター)、ジェラルド・クレイトン(ピアノ)、そして10年以上ロイドのお気に入りであり続けているルーベン・ロジャース(ベース)とエリック・ハーランド(ドラムス)のコンビ。彼らは9月1日に日本最大級のジャズフェス「東京JAZZ」でカマシ・ワシントンのグループとダブルビル公演を行ない(カマシとロイドを結びつけるキーワードは"ビリー・ヒギンズ"だと思います)、9月3日にブルーノート東京における初日の幕を開けました。
ステージは最新アルバム(チャールズ・ロイド&マーヴェルズ名義)『Defiant』から、そのタイトル曲で始まりました。2メートル近い長身のロイドはマイクから少々離れ気味に立ち、サブトーン(息の音)を生かしながらテナー・サックスを揺さぶるように演奏します。枯淡の境地をそのまま音像化したようなプレイが終わると、今度はクレイトンやラージの清流のようなソロが新たな流れを創り出します。"黒人国歌"の異名をとる「Lift Every Voice」を導入部にして始まったのは「Nu Blues」。ここではメンバー全員の長尺のアドリブがフィーチャーされましたが、誰もがインスピレーションのかたまりです。ハーランドは他のソリストがプレイしている間、ほぼ全拍で鈴の乗っかったハイハットを踏み(アート・ブレイキーなど往年のモダン・ジャズ・ドラマーのように2拍、4拍ではなく)、自身のソロになるとバスドラも4つ打ちにしつつ、両手で自由奔放なフレーズを送り出します。豊かなヴォリューム・コントロール、まるで歌っているかのようにメロディアスなフレーズと音程、複数あるシンバルそれぞれのキャラクターの立ったトーン、まさに現代ジャズ・ドラムの美しさがここにありました。
ステージ中盤でロイドは突如、オーネット・コールマン作「Peace」のメロディを演奏しました。おそらく予定になかったであろうことは、各メンバーの反応からわかりましたが、十数秒の間に彼はテナー・サックスからフルートに持ち替え、くねくねしたメロディを持つブルース・ナンバーに取り掛かります。'60年代からの愛奏曲「Third Floor Richard」と「Island Blues」を混合したような展開といえばいいでしょうか。ロイドの後を受けたラージのギターがまた、圧巻でした。オーネットの「Dancing in Your Head」のフレーズを転調しながらこれでもかと高速で繰り返し、テレキャスターを引き倒す勢いのピッキングで空間を埋め尽くし、最後はチョーキング交じりの豪快なプレイで締めました。上昇気流の者だけが持つオーラが、彼のプレイから放たれている印象を受けました。弾き終えたとたん、猛烈な拍手が起こり、椅子に座って演奏を眺めていたロイドも破顔一笑です。
キース・ジャレットやミシェル・ペトルチアーニがいた頃のロイド・バンドには間に合いませんでしたが、ぼくは'94年に新宿で行なわれたECMレーベル設立25周年コンサート以降、来日のごとに彼のライヴを体験しています。そして、この"Kindred Spirits"は自分が接してきたロイドの実演中、最高峰にランクされる演奏内容であり、ユニットであると断言できます。公演は本日も行なわれます。あまりにも素晴らしい世代間交流を、ぜひ手の届く距離でお楽しみください!
(原田 2019 9.4)
Photo by Yuka Yamaji
2019 9.3 TUE.
1st | |
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1. | DEFIANT |
2. | LIFT EVERY VOICE AND SING |
3. | HYPERION WITH HIGGINS |
4. | REQUIEM |
5. | THIRD FLOOR RICHARD |
6. | AY AMOR |
2nd | |
1. | DREAM WEAVER |
2. | OF COURSE, OF COURSE |
3. | THE SONG MY LADY SINGS |
4. | TONE POEM |
EC1. | HOW CAN I TELL YOU |
EC2. | AY AMOR |