LIVE REPORTS

ARTIST ARCHIVES

MONTHLY ARCHIVE

VIDEO ARCHIVES


MICHEL CAMILO with BIG BAND

artist MICHEL CAMILO

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

とんでもなく高度なことを、どこまでも親しみやすくポップに伝える・・・それこそミシェル・カミロの最大の魅力だとぼくは思っています。その人気者が、今年2度目のブルーノート東京公演を、超満員のオーディエンスを迎えて盛大に開催中です。

春は"トリオ・ラティーノ"での登場でしたが、今回はビッグ・バンド編成による最新作『エッセンス』をフォローするステージ。カミロが連れてきた盟友たちと、日本を代表する逸材が一体となった、大迫力のパフォーマンスは文字通り、時間の経過を忘れさせてくれました。セッティングの関係上、カミロの楽器はステージ下手側の思いっきり前に置かれ、しかも蓋が取り外されています。近くの席に座った方は、あのゴージャスなピアノ・サウンドを全身にシャワーのように浴びるという貴重な経験をなさったことでしょう。その右側にはベーシストのリッキー・ロドリゲスが立ち、後方左側にはパーカッション奏者エリエル・ラソ、右側にはドラマーのクリフ・アーモンドが位置します。オープニングは、マイルス・デイヴィスやソニー・ロリンズとの共演でも知られるパーカッション奏者サミー・フィゲロア(先ごろのジャズジャパン誌にインタビューが掲載されていました)に捧げた「And Sammy Walked In」。先発ソリストの竹村直哉が骨太なテナー・サックス・ソロを聴かせ、続くカミロのピアノは鳴り渡るホーン・セクションを突き破るように響き、クライマックスはトランペット・セクションとサックス・セクションのソリ(ソロの複数形)のかけあい。なかでもマイケル・フィリップ・モスマン(彼は'80年代に、ケニー・ギャレットらと共に"OTB"というバンドを組んでいました)を含む5人のトランペット奏者が生み出すアンサンブルは抜群に分厚く、きらびやかでした。

続いてはカミロのワールド・デビュー作(彼はアメリカからアルバムを出す前、日本のキングレコードに2作品を残しています)に参加していた巨匠モンゴ・サンタマリアの思い出を綴った「Mongo's Blues」。モンゴと同じくキューバ生まれのエリエルがチャント(朗詠)と打楽器でイントロ部分を担当し、やがて強烈にスウィングするバンド演奏へと移ってゆきます。ホレス・シルヴァーの「Senor Blues」にさらにひねりを加えたようなメロディ・ライン、リズム・パターンが印象的です。本田雅人のアルト・サックスがメロディを歌いあげる「Just Like You」に続いては、ドラムとパーカッションを除く全員が高速でテーマ・メロディをユニゾンする「Yes」へ。1917年に出版されたアメリカのポップ・ソング「(Back Home Again in) Indiana」のコード進行を基に、モスマンやカミロの華麗なアドリブ・プレイが火を噴きました。そしてラストは、カミロみずから"私の代表曲"と語る「On Fire」。会場からもひときわ大きな拍手が沸き起こり、白熱の即興の後、エンディングの大合奏が終わってエンディングかと思いきや、そこからモントゥーノ状態に突入。エリエルとメロディ楽器のバトルとなり、最後にもう一度、今度はさらに激しい大合奏へとなだれこんでステージは終了しました。公演は8日まで開催、10日はコットンクラブでソロ・ピアノ公演が行なわれます。

(原田 2019 9.6)

Photo by Takuo Sato


☆コットンクラブでは一夜限りのピアノ・ソロ公演も!
MICHEL CAMILO - piano solo -
2019 9.10 tue. 丸の内・コットンクラブ
詳細はこちら

SET LIST

2019 9.5 THU.
1st
1. AND SAMMY WALKED IN
2. MONGO’S BLUES INTRO
3. MONGO’S BLUES
4. JUST LIKE YOU
5. YES
6. ON FIRE
EC. ONE MORE ONES
 
2nd
1. MANO A MANO
2. LIQUID CRYSTAL
3. HELLO AND GOODBYE
4. PIECE OF CAKE
5. CARIBE
EC. REPERCUSSIONS

INDEX