9.19 thu. @仙台電力ホール / 9.21 sat., 9.22 sun., 9.23 mon. @ブルーノート東京
BLUE GIANT NIGHTS 2019
artist
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
第62回「小学館漫画賞」(一般向け部門)、第20回「文化庁メディア芸術祭マンガ部門」大賞を受賞した青春ジャズ漫画 "BLUE GIANT"(石塚真一・作)にちなむジャズ・ライヴ・イベント「BLUE GIANT NIGHTS」が今年も盛大に開催されました。昨年はブルーノート東京(作品中に登場するジャズ・クラブ「So Blue」のモデル)が舞台でしたが、今年は加えて主人公=宮本大の故郷・仙台でも開催。BLUE GIANTの輪、ジャズの輪はますます広がるばかりです。シーン最前線のアーティストや夢を追いかける次世代が、ジャズ・ライヴの醍醐味をたっぷり伝えてくれました。
ぼくは9月19日、仙台「電力ホール」で行なわれた公演に足を運びました。石塚氏はMCを担当し(姿は出ず、声だけですが)、よく響く力強い声でメンバーを紹介します。オープニングは、激戦のオーディションを勝ち抜いた全員10代のユニット"Ascension(アセンション)"。佐々木諒太(テナー・サックス)、菊池冬真(ピアノ)、山本修也(エレクトリック・ベース)、片山晴翔(ドラムス)の4人組。「Dog Fight」というファンキーなオリジナル曲もありますが、今回はウェイン・ショーターの「Black Nile」と「Yes or No」をパワフルに演奏しました。特に唸らされたのは、「Yes or No」の途中に登場した片山(15歳)のソロです。70年代後半以降のトニー・ウィリアムスを研究したのでは?と思われるフレージング、そして美しいフォーム(姿勢)とチューニングに唸らされました。
続いては鍵盤の鬼才、ジェイムズ・フランシーズが自身のユニット"フライト"を率いて登場します。共演はケイシー・ベンジャミン(アルト・サックス)、チャールズ・アルトゥラ(ギター)、ジェレミー・ダトン(ドラムス)。今年の初め、パット・メセニーの新プロジェクト"サイド・アイ"でブルーノート東京に登場し、"いったい指が何十本あるんだろう"的なすさまじいプレイを聴かせてくれたばかりですが、今回もかなりの部分で複数のキーボードを同時に演奏し、むちゃくちゃドライヴする左手のベース・ライン、鮮烈にして鋭利な右手のメロディ・ラインの強烈なコンビネーション、さらにヴォコーダーでも目と耳を圧倒してくれました。ジェイムズにとって、この「BLUE GIANT NIGHTS」が、自身のユニットによる日本初公演ということになります。つまり、仙台のオーディエンスは、日本で最初にこのユニットの生演奏を体験する機会を持った、ということです。ぼくは時おり客席を見ながら、演奏に聴き惚れました。最初、ポカンとしているお客さんもいらっしゃったように見えましたが(なかには、"自分が慣れ親しんできたジャズとは違う種類のジャズだなあ"と思ったベテラン・ファンもいたかもしれません)、徐々に体を揺らすひと、身を乗り出すひとが増え、最後は喝采です。演奏曲目は「Open Water」、「Reciprocal」、「ANB」。2曲目以降はアルバム『フライト』にも収録されていますが、そのテイクと比較対照すると、ジャズは生き物であることが、より明瞭に感じられると思います。
独特の形状をもつコロンビアン・ハープがステージに運び込まれると、それだけで観客は沸きます。トリは上原ひろみ(ピアノ)とエドマール・カスタネーダ(ハープ)のデュオです。アルバム『ライヴ・イン・モントリオール』のリリースから2年、こちらも進化が止むことはありません。上原の内部奏法(ピアノの弦を手で操作する)とエドマールの低音のリズミカルな語り合いから始まる「For Jaco」を経て、白熱の四部作「The Elements」まで、一切のMCを挟まず、ドラマティックなステージを構築。自由奔放な、まさに音で会話を繰り広げているというしかいいようのない即興部分と、テーマ・メロディにおける一糸乱れぬ"キメ"のコントラストはさらに極まっているという印象を受けました。そしてラストは、10人全員が登場してチック・コリアの「Spain」を演奏。チックのバンド"ヴィジル"にいたチャールズのギターはさすがの迫力、上原やジェイムズと共にピアノを弾く菊池冬真の感極まったような表情も印象に残りました。国境も世代も超えて語り合えるジャズの魅力にあふれた「BLUE GIANT NIGHTS」、次回の開催が楽しみです。
※セットリストとライブ写真は東京公演初日のものです。
©︎Blue Note Tokyo
2019 9.21 SAT.
1st | |
---|---|
Ascension | |
1. | BLACK NILE |
2. | YES OR NO |
BLUE NOTE RECORDS SPECIAL BAND | |
3. | RECIPROCAL |
4. | ANB |
5. | ROCKSTAR |
6. | CRIB |
HIROMI × EDMAR CASTANEDA | |
7. | A HARP IN NEW YORK |
8. | FOR JACO |
9. | PLACE TOBE |
10. | CANTINA BAND |
11. | LIBERTANGO |
EC. | SPAIN |
2nd | |
Ascension | |
1. | BLACK NILE |
2. | YES OR NO |
BLUE NOTE RECORDS SPECIAL BAND | |
3. | RECIPROCAL |
4. | ANB |
5. | DIAMONDS |
6. | CRIB |
HIROMI × EDMAR CASTANEDA | |
7. | THE ELEMENTS:AIR |
8. | THE ELEMENTS:EARTH |
9. | THE ELEMENTS:WATER |
10. | THE ELEMENTS:FIRE |
EC. | SPAIN |