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CHRISTIAN SANDS TRIO

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

"全鍵盤を駆使する"という表現がぴったりくる雄大なタッチ、一糸乱れぬベーシストやドラマーとの呼吸。俊英ピアニストのクリスチャン・サンズが、最新トリオを率いて5年半ぶりにブルーノート東京で公演中です。

共演メンバーのうち、ベーシストのジョナサン・ミュア・コットンはロバート・ハーストやロドニー・ウィテカーにも学んだデトロイトの気鋭。ドラマーのライアン・サンズはクリスチャンの弟で、今回が初来日とのことです。スティック、ブラッシュのほかマレットを用いた演奏にも非凡な才能を発揮していました。
オープニングは、ライヴ会場につめかけたファンへのメッセージということでしょうか、「Blues for Tokyo」という楽曲がプレイされました。どこか1960~70年代のロイ・メリウェザーやレス・マッキャンの作風に通じる、ゴスペルとブルースが一緒になったような、実にノリのいいナンバーです。この1曲でオーディエンスの心をしっかり掴み、あとは発表直後のアルバム『Embracing Dawn』からの「Ain't That the Same」、「Serenade of an Angel」、「MMC」なども織り交ぜながら、スロー・テンポから急速調のもの、踊りだしたくなるようなビートを持つものまで、実に多彩なナンバーで楽しませてくれました。「Ain't That the Same」におけるピアノとベースの絡みには絶品でしたし(弓弾きも含めて、コットンは本当に音程の良い奏者です)、ライアンの"ソリストを献身的なまでにサポートしつつ、いざというときは爆裂する"的なプレイにも耳を奪われました。

後半では、デイヴ・ブルーベックの名盤『Time Out』から、超有名な「Take Five」の陰に隠れがちな「Strange Meadow Lark」を、何とも優美に解釈します。"Meadow Lark"がマキバドリ(おなかの部分が黄色と黒の鳥)を示すことにちなんでか、イントロとアウトロの部分では(プログラミングされていたと思われます)鳥の声にあわせてメロディが演奏されました。そしてラストを飾ったのは、なんとチャーリー・パーカーの古典「Anthropology」。バド・パウエルやブラッド・メルドーなど、ピアノ・トリオ編成で取り組んだミュージシャンはごくわずかなのではないかと思いますが、クリスチャン・サンズ・トリオはテンポやハーモニーを自在に変化させて、"今この時の、自分たちだけの「Anthropology」"として観客に差し出します。

先月登場したエメット・コーエン・トリオ(コーエンもサンズ同様、クリスチャン・マクブライドの薫陶を受けました)の公演に足を運んだ方にも強くお勧めしたい、ジャズの伝統や歴史への敬愛が濃厚に息づくライヴという印象を受けました。要注目の気鋭3名による公演は30日まで続きます。

(原田 2024 11.28)

Photo by Jun Ishibashi


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【LIVE INFORMATION】

CHRISTIAN SANDS TRIO
2024 11.28 thu., 11.29 fri., 11.30 sat. ブルーノート東京
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