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ALFREDO RODRIGUEZ TRIO

artist ALFREDO RODRIGUEZ

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

クインシー・ジョーンズに認められて世界進出を果たした人気ピアニスト、アルフレッド・ロドリゲスのブルーノート東京公演が昨日から始まりました。15日から17日にかけて行われた船上コンサート「JAZZ ON ASUKA Ⅱ with BLUE NOTE TOKYO」を終えて、いよいよ"日本のホームグラウンド"にやってきた感じです。彼のライヴは「オリジナル曲」と「カヴァー曲」のバランスが絶妙で、しかも「カヴァー曲」の選択範囲が国境や時代を軽々と超えていきます。驚愕のテクニックで圧倒するとともに、オーディエンスから笑顔を引き出して、メロディを一緒に口ずさまずにはいられない気分にさせてくれるのも、また、アルフレッド・ロドリゲスの大きな強みです。

今回のステージは、もはや一心同体と言っていいドラマーのマイケル・オリヴェラ、そして新加入となる5弦ベース奏者スワエリ・ムバッペとのトリオ編成。スワエリは、ジョー・ザヴィヌルやジョン・マクラフリンらと共演した超絶ベーシスト、エティエンヌ・ムバッペの愛息で、"ムッシュ・マーラー"というバンドでも実に興味深い活動を繰り広げてきました。ネック寄りのポジションで柔らか目の音を出したかと思えば、素早く指をブリッジ寄りに移して硬質な音で弾きまくり、さらに、親指を使ったミュート奏法でも強烈な存在感を放ちます。オリヴェラはアディショナル・スネアや変形シンバル、高い音の出る小型のタムを効果的に使いながら、時にアグレッシヴに、時にメロディアスにロドリゲスのピアノ演奏に絡みます。目下の新作『コーラル・ウェイ』からは「Coral Way」や「Blueberry Fields」が披露されましたが、ディスクでは3分台に収まっていたパフォーマンスが、時間をたっぷりかけた、即興を存分に含んだヴァージョンとして目の前で解凍されていくのは、「まさに、ライヴの醍醐味」との一言に尽きます。ロドリゲスは自らのソロを弾き終えると、感極まった表情で鍵盤から手を放し、立ち上がります。そしてソリストの座がスワエリに移り変わると、そこから楽曲は新たな章に突入します。ロドリゲスは曲想に応じて内部奏法(ピアノの弦を演奏)も用いてベース・ソロをサポートし、スワエリのソロが終わると、楽曲はさらなる展開へと進んでいくのです。「Besame Mucho」や「Mama Ines」といったラテン・ナンバーの定番中の定番も、まるで組曲のような厚みを持って耳に届きます。

ライヴ後半では恩師クインシー・ジョーンズを偲んで「Thriller」、さらに『コーラル・ウェイ』から「Für Elise」(邦題「エリーゼのために」)なども演奏されました。後者に関しては、ジョン・バティステも最新ソロ・ピアノ・アルバムでとりあげたばかりですが、バティステはニューオリンズ、ロドリゲスはキューバと、それぞれの出自を生かしたセンスで、このベートーヴェンの大古典に臨んでいるところを私はとても興味深く感じました。俊英アルフレッド・ロドリゲスと、最高の仲間たちによる公演は20日まで続きます。
(原田 2025 3.19)

Photo by Jun Ishibashi


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【LIVE INFORMATION】

ALFREDO RODRIGUEZ TRIO
2025 3.18 tue., 3.19 wed., 3.20 thu. ブルーノート東京
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